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留学同情勢ニュース 等 ブログ

留学同(在日本朝鮮留学生同盟)が朝鮮半島情勢をはじめとして様々な情報や見解を発信するブログです。

「シンガポール朝米首脳会談における合意の本質は何なのか?-朝米高位級会談の『決裂』から考える」

 周知の通り、朝鮮民主主義人民共和国(以下、朝鮮)の金正恩国務委員長と米国のトランプ大統領が2018年6月12日、シンガポールで初の歴史的な首脳会談を行った。
 そして、「金正恩委員長とドナルド・トランプ米大統領の間のシンガポール首脳会談共同声明(以下、シンガポール共同声明)」を発表、「新たな朝米関係の樹立」や「朝鮮半島における恒久的で強固な平和体制の構築に関する諸問題」、「(米国が)朝鮮に安全の保証を提供すること」、「朝鮮半島の完全な非核化」を宣言した。

朝米首脳会談


 それを受けて、宣言を具体的に実践していくための初の朝米高位級会談が7月6日、7日に平壌で行われた。
 ところがこの会談に対する朝鮮と米国のそれぞれの評価が非常に対照的なものであった。

 高位級会談に臨んだ米国のポンペオ国務長官は会談後の記者会見で「生産的な会合を持った」、「首脳会談の合意をさらに進めようと努め、前進を見た」と肯定的に評価した(後述)。
 それに対し朝鮮側は会談直後に外務省スポークスマンの談話を発表。その中で「初の朝米高位級会談で示された米国側の態度と立場は実に残念極まりないものであった」、「米国側は…一方的で強盗さながらの非核化の要求だけを持ち出した」、「会談の結果は、極めて憂慮すべきものだと言わざるを得ない」と酷評したのである(こちらも後述)。

 この会談を受けた日本の各新聞の社説は、朝鮮の非を鳴らし、朝鮮の非核化のみを求めるものばかりだった(いつもそうだが)。

 例えば、

―――――――――――――――

[毎日新聞](社説)非核化で米朝にミゾ 6・12声明が揺れている
https://mainichi.jp/articles/20180710/ddm/005/070/169000c
 「根本的な問題は、6月12日の米朝首脳会談で「完全な非核化」に合意したにもかかわらず、北朝鮮は具体的な行動を起こそうとしないことだ。」
 「しかも米主要メディアは情報機関の分析に基づき、北朝鮮が非核化どころか核施設の拡充を進めているなどと報じている。事実なら北朝鮮は国際社会をまた欺くことになる。
 ポンペオ氏と日韓の外相が、非核化の完了まで対北朝鮮制裁を続けることで一致したのは当然である。
 確認しておこう。ボールは北朝鮮のコートにある。米国は韓国との合同軍事演習の中止を発表して非核化の環境づくりに努めた。「完全な非核化」を世界に公言した金委員長は威信にかけても約束を守るべきだ。」


[日本経済新聞](社説)北の非核化へ結束緩めるな
https://www.nikkei.com/article/DGXKZO32792560Z00C18A7EA1000/
 「北朝鮮外務省報道官は米朝協議で米国が完全で検証可能かつ不可逆的な非核化(CVID)や核施設の申告・検証を一方的に迫ったとし「米国の態度は遺憾極まりない」と非難した。北朝鮮内では、最近も核施設の改修作業や隠蔽工作といった動きが指摘される。
 日米韓が対北朝鮮制裁を核放棄まで維持する立場を申し合わせたのは当然である。CVIDも譲れない。北朝鮮が米朝協議で提起した米朝間の交流や朝鮮戦争の終結宣言は、地域の安全保障に直結するだけに慎重な対応を求めたい。」


―――――――――――――――

 しかし、このような主張は妥当であると言えるだろうか?

 まず、双方で評価が分かれた今回の会談の内容が実際にどういうものだったのかについて、双方の発言と発表を通して考えてみたい。

 7月8日の米韓日外相による記者会見でポンペオ国務長官は記者会見で次のように述べた(https://jp.usembassy.gov/ja/secretary-of-state-pompeo-joint-press-conference-ja/)。少し長くなるが引用したい。

 「この2日間、私と私のチームは、(北朝鮮の)金英哲(朝鮮労働党)副委員長らと協議を行いました。我々は誠実で生産的な会合を持ち、こうした話し合いは今後も続きます。一方、制裁は継続し、我々は今後も制裁実施を精力的に続けます。

 北朝鮮滞在中、トランプ大統領と金委員長の合意をさらに進めようと努め、前進を見ました。しかし、まずはっきりさせておきたいのは、北朝鮮が完全な非核化への決意を再確認した点です。我々は、完全に検証された、完全な非核化に向けた次の段階について、詳細かつ実質的な協議を行いました。

 また、北朝鮮は、米軍兵士の遺骨の送還について協議するため、7月中旬に板門店で会合を持つことに合意しました。さらに、この地域および世界の安全につながる、ミサイルエンジンの実験場を破壊する先の約束を再確認しました。我々はまた、米朝両サイドで日常業務にあたる実務レベルの作業部会を立ち上げました。」


記者会見

 このような発言を見ると、彼の頭の中にはほぼ「(北)朝鮮の非核化」しかないとみることが出来る。

 一方、朝鮮外務省スポークスマンの談話では次のように述べられている。こちらも少し長くなるが引用したい。

 「わが方は、朝米首脳の対面と会談の精神と合意事項を誠実に履行する変わらない意志から、今回の会談で共同声明の全ての条項のバランスの取れた履行のための建設的な方途を提起した。

 朝米関係改善のための多面的な交流を実現する問題と朝鮮半島での平和体制構築のためにまず朝鮮停戦協定締結65周年(7月27日)を契機に終戦宣言を発表する問題、非核化措置の一環としてICBMの生産中断を物理的に実証するために大出力エンジン試験場を廃棄する問題、米軍遺骨発掘のための実務協議を早急に始める問題など、広範囲な行動措置を各々同時に取る問題を討議することを提起した。

………

 しかし、米国側はシンガポール首脳の対面と会談の精神に背き、「完全で検証可能かつ不可逆的な非核化(CVID)」、申告、検証だのと言って、一方的で強盗さながらの非核化の要求だけを持ち出した。

 情勢の悪化と戦争を防止するための基本問題である朝鮮半島の平和体制構築問題については一切言及せず、すでに合意した終戦宣言問題までもあれこれ条件と口実をつけて後回しにしようとする立場を取った。」


 双方の発言、発表から推測するに、朝鮮側は「シンガポール共同声明」の全項目にわたって詳細を討議しようとしたのに対し、米国側は「(北)朝鮮の非核化」と「遺骨の送還問題」だけを議論しようとしたのだろう。

 ではどちらの態度が正しいと言えるだろうか?

 ここで改めて「シンガポール共同声明」で何を合意したのかについて確認したい。

 声明では4つの項目を宣言しているが、ここで改めてその4つの全文を掲載する。

 「1.朝鮮民主主義人民共和国とアメリカ合衆国は平和と繁栄を願う両国人民の念願に基づいて新たな朝米関係を樹立していくことにした。」
 「2.朝鮮民主主義人民共和国とアメリカ合衆国は朝鮮半島で恒久的で強固な平和体制を構築するために共に努力する。」
 「3.朝鮮民主主義人民共和国は2018年4月27日に採択された板門店(パンムンジョム)宣言を再確認し、朝鮮半島の完全な非核化に向けて努力することを確約した。」
 「4.朝鮮民主主義人民共和国とアメリカ合衆国は、戦争捕虜および行方不明者の遺骨発掘を行い、すでに発掘確認された遺骨を即時送還することを確約した。」


 見ればわかる通り、「(北)朝鮮の非核化」だけを合意したのではまったくない。

 70年にわたる不幸な冷戦体制を終わらせ、「①新たな朝米関係を樹立」し、「②朝鮮半島で恒久的で強固な平和体制を構築」するということ、そしてそのためにも「③朝鮮半島の完全な非核化」を実現することを宣言したのである。

 考えるまでもなく①と②を実現していくことなしに、③を実現することは不可能である。
 ましては70年間、時に戦争直前に至るまで厳しく対立してきたのである。
 まずはお互いの不信と対立を払拭し、信頼関係を構築することが先決である。
 それらをすべて無視し、「(北)朝鮮の非核化」だけを求める米国の高圧的な態度は根本問題の解決を完全に妨げる旧来式のものであり、それに追随する日本をはじめとしたメディアの論調はやはり問題があると断じざるを得ない。

 しかし、朝米双方ともに対話を継続する意思を捨ててはいないようである。

 朝鮮は同じ談話で「われわれは、トランプ大統領への信頼を今もそのまま持っている」と述べているし、米国側も対話の継続を示している。

 70年以上にわたって継続し、朝鮮半島、そして東アジアの不安定な体制を規定してきた冷戦構造が今解体に向かおうとしているのである。
 歴史は動いているのである。その動きは誰にも止められないし、止めてはならない。(賢)

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時代の流れに逆行する日本~ただ不当で醜悪極まりない「嫌がらせ」制裁措置

 6月28日、修学旅行で朝鮮民主主義人民共和国を訪れていた神戸朝鮮高級学校の生徒が持ち帰った土産品を関西空港の税関が不当に押収するという事件が起こった。
 この事件を受けて6月29日夕方に、総連中央は緊急記者会見行い、日本政府を強く糾弾した。

【朝鮮新報】関空税関当局が生徒たちの土産品を不当押収/朝鮮会館で緊急記者会見
(URL→ http://chosonsinbo.com/jp/2018/06/0030/
【朝日新聞】修学旅行で北朝鮮土産「税関が不当に押収」総連が抗議
(URL→ https://www.asahi.com/articles/ASL6Y5SB8L6YUTIL036.html
【日刊イオ】総連中央が関空税関当局の不当な押収に抗議する記者会場
(URL→ https://blog.goo.ne.jp/gekkan-io/e/025f5e9bf8ab5bdd7a1845aa4b2ef178

 以下、朝鮮新報記事より引用する。

 徐忠彦局長は記者会見で不当な「制裁」の名目で輸入品でもない土産品を押収した税関当局を厳しく断罪し、「対話と圧力、和解と敵対行為は両立しないことを安倍政権は知るべきだ」としながら、「今回の事件がこれからの朝日関係に大きな禍根を残すことになるだろう」と強調した。さらに、徐忠彦局長は朝日関係の改善と在日朝鮮人の人権保障のために
 1.制裁を口実に基本的人権を踏みにじることは許されず、よって税関当局は在日朝鮮人生徒たちに対するこのような職権乱 用、非道極まりない人権侵害行為について真摯に謝罪し、再発防止を確約すること。
 2.日本政府は今回の事態が発生した根源である、朝鮮に対する不当な制裁を一日も早く撤回すること。
 3.日本政府は在日朝鮮人の民族教育に対する不当な差別と弾圧をただちに中止し、国際人権法に基づいた諸権利を保障すること。
を強く求めた。

 ここで指摘されているように、今回の朝鮮学校生徒たちに対する行為は非人道極まりない人権侵害行為であり、今回の事件の根源である朝鮮に対する不当な経済制裁を日本政府は一刻も早く撤回しなければならない。

 この事件について、在日同胞社会だけでなく、朝鮮中央通信社は7月4日に「対話と人権を云々する日本の真面目」という論評を、南の市民団体は250余団体の賛同のもとソウル日本大使館前で抗議の記者会見を行った。

【朝鮮新報】朝高生の荷物没収を非難/朝鮮中央通信社論評
(URL→ http://chosonsinbo.com/jp/2018/07/yr20180705-3/
【朝鮮新報】朝鮮学校生徒への蛮行を糾弾/南の市民団体が記者会見
(URL→ http://chosonsinbo.com/jp/2018/07/yr20180705-4/

 さて、前回の記事でも言及されていたが、経済産業省は朝鮮の経済制裁として以下のようなことを規制している。
 「対北朝鮮からの輸出禁止措置等について」、「対北朝鮮からの輸入禁止措置等について」において、
 ①「北朝鮮」を仕向地とするすべての貨物、
 ②「北朝鮮」を原産地または船積地域とするすべての貨物の輸出・輸入を禁止しており、人道目的等に該当するものについては、措置の例外とされている。
 
 今回の事件は今に始まった事ではない。朝鮮を訪問した在日同胞に対する日本の税関での土産品の不当押収は今までも繰り返されてきた。
 留学同も去年2017年の夏、朝鮮訪問の後、日本に再入国をした際に関西国際空港において税関で同等の制裁を受け土産品を没収された。私たちは憤慨し、後日経済産業省と関空税関宛に抗議文を送付した。抗議文は学生たちの怒りの発露でできるだけ早く送り付けたいと思いからあまり細かく精査したわけではないが、今となって改めて行動に移したことが大事だと思っている。※ブログ末に抗議文全文を掲載する。
 送った抗議文だが、経済産業省は何のリアクションも無かったのだが、関空税関からは返答が来た。これがまたあまりに人を舐めているのでそのまま画像を貼る。何の反省も謝罪もなく参考だとは。当時の私たちは更なる怒りに震えた。こんな返答をしてくるぐらいだから、今回の神戸朝高の件のような事態が再発したのであろう。

抗議文返答

 つい先日祖国訪問から日本に再入国した大阪朝鮮高級学校の卒業生には税関での不当な暴力・没収は無かったらしい。これに対して「良かった」とか言う人がいるが、一つだけ言っておきたい。制裁無くて不当な暴力・没収を受けないのが「当たり前」なのである。
 そもそも、この朝鮮に対する経済制裁に一体何の意味があるのか。歴史的な「4.27北南首脳会談」、「朝米会談」が行われ、朝鮮半島の平和に向けて世界が動いている中、世界の流れに逆行している安倍政権はただちに「北朝鮮」制裁、在日朝鮮人に対する差別・弾圧をやめなければいけない。(純)

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経済産業大臣 世耕 弘成 殿
貿易経済協力局貿易管理部貿易管理課長 戸高 秀史 殿

抗議文

 私たちは日本にある大学・専門学校に通う在日朝鮮人学生である。
この度、朝鮮民主主義人民共和国(以下「朝鮮」)より日本に再入国した我々に対して関西国際空港税関が行った、反人権的・反人道的な所持品検査と所持品の没収に対して、強い憤りを感じている。我々一人に対し複数の局員で長時間対応され、下着を含む衣類を必要以上に検査される等、他の旅行者とは一線を画すこのような不当な対応によって、非常に不快な思いをさせられ、精神的苦痛を受けた。これらの「略奪行為」ともいえる措置を示す経済産業省に対して、激しく抗議する。

経済産業省は「外国為替及び外国貿易法に基づく北朝鮮に係る対応措置について」(2017年4月7日閣議決定)に基づき、「外国為替及び外国貿易法に基づく北朝鮮輸出禁止措置」を講じたが、それが今回のような反人権・反人道的行為を許す根拠になっているという点で、極めて問題性の大きいものであることを指摘する。

このような措置を講ずる理由として、朝鮮のミサイル・核開発を挙げているが、朝鮮のそれに対してだけ問題視すること自体極めて不当である。ミサイルの開発・発射実験及びそれに関連するとされる宇宙開発は、アメリカ合衆国や中華人民共和国はもとより日本でも行われていることである。また核に関しては、国際連合常任理事国5カ国のほか、イスラエル、インド、パキスタンも核保有を宣言し、つい先日アメリカが核実験を行ったことは周知の事実である。このような状況下で、朝鮮に対してだけ制裁を行い、その他の国及び自国の行っていることは黙認するというダブルスタンダード(二重基準)は、明らかに正当性を欠いたものであり悪辣というほかない。
また、経済産業省は「外国為替及び外国貿易法に基づく北朝鮮輸出禁止措置」が「外国為替及び外国貿易法」第48条第3項に基づくものであると示しているが、たかが朝鮮で生産された食品や雑貨の持ち込みが「国際的な平和及び安全の維持を妨げる」ものであり、それらを没収することが「国際収支の均衡の維持のため、外国貿易及び国民経済の健全な発展のため、我が国が締結した条約その他の国際約束を誠実に履行するため、国際平和のための国際的な努力に我が国として寄与する」ものであるとは到底考えられない。

以上の点を踏まえ、我々は以下のことを要求する。

1.経済産業省は「外国為替及び外国貿易法に基づく北朝鮮輸出禁止措置」を即時停止せよ。
2.今後二度と、このような措置を講じないことを公的に確約せよ。
3.経済産業省の措置により、9月4日に関西国際空港の税関職員が「所有権の放棄」を強要した食品(餅等)、雑貨(筆箱等)を以下(代表者宛)に即刻返還せよ。
4.今回我々が被った精神的被害について、代表者宛に謝罪文を送付せよ。
5.経済産業省が不当に数年間継続しているこのような不当な措置によって被った、在日朝鮮人に対する物質的・精神的被害について公的に謝罪せよ。
代表者住所:
代表者姓名:

2017年9月25日
9月4日に朝鮮民主主義人民共和国から関西国際空港、及び羽田空港税関を通過して日本に再入国した
日本の大学・専門学校に通う在日朝鮮人学生・団体職員一同

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関西国際空港税関支署長 殿

抗議文

 私たちは日本にある大学・専門学校に通う在日朝鮮人学生である。
この度、朝鮮民主主義人民共和国(以下「朝鮮」)より日本に再入国した我々に対して関西国際空港税関が行った、反人権的・反人道的な所持品検査と所持品の没収に対して、我々は強い憤りを感じるとともに、激しく抗議し、以下数点を具体的に提示する。

 9月4日、朝鮮民主主義人民共和国への滞在を経て日本へ再入国した際、税関にて過剰にキャリーケースの中身を探られた挙げ句、最終的に所有物の一部を没収された。我々一人に対し複数の局員で長時間対応され、下着を含む衣類を必要以上に検査される等、他の旅行者とは一線を画すこのような不当な対応によって、非常に不快な思いをさせられ、精神的苦痛を受けた。
今回当局員らが行なった行為は、必要以上に個人の所有物を検査・詮索した点において、セクシャル・ハラスメント、プライバシーの侵害に相当するものであり、人としての良心や誠実さに欠けた対応であったと考える。
 また、やりとりの中で当局員は朝鮮民主主義人民共和国を指して「北鮮」という言葉を用いた。これは、他国の人民を貶める蔑称であり差別語に値する。このような不適切な表現は到底看過できるものではない。

現在、日本国憲法においてプライバシー(憲法13条)、財産権(憲法29条)が保護されており、またヘイトスピーチ対策法(本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律)でも差別的言動に対する対策が急務であることが確認できる。

******************************************
(日本国憲法)
第十三条  すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
第二十九条  財産権は、これを侵してはならない。
2  財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。
3  私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。

(本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律)
(前文)
我が国においては、近年、本邦の域外にある国又は地域の出身であることを理由として、適法に居住するその出身者又はその子孫を、我が国の地域社会から排除することを煽動する不当な差別的言動が行われ、その出身者又はその子孫が多大な苦痛を強いられるとともに、当該地域社会に深刻な亀裂を生じさせている。
もとより、このような不当な差別的言動はあってはならず、こうした事態をこのまま看過することは、国際社会において我が国の占める地位に照らしても、ふさわしいものではない。
ここに、このような不当な差別的言動は許されないことを宣言するとともに、更なる人権教育と人権啓発などを通じて、国民に周知を図り、その理解と協力を得つつ、不当な差別的言動の解消に向けた取組を推進すべく、この法律を制定する。
(定義)
第二条 この法律において「本邦外出身者に対する不当な差別的言動」とは、専ら本邦の域外にある国若しくは地域の出身である者又はその子孫であって適法に居住するもの(以下この条において「本邦外出身者」という。)に対する差別的意識を助長し又は誘発する目的で公然とその生命、身体、自由、名誉若しくは財産に危害を加える旨を告知し又は本邦外出身者を著しく侮蔑するなど、本邦の域外にある国又は地域の出身であることを理由として、本邦外出身者を地域社会から排除することを煽動する不当な差別的言動をいう。
(教育の充実等)
第六条 国は、本邦外出身者に対する不当な差別的言動を解消するための教育活動を実施するとともに、そのために必要な取組を行うものとする。
2 地方公共団体は、国との適切な役割分担を踏まえて、当該地域の実情に応じ、本邦外出身者に対する不当な差別的言動を解消するための教育活動を実施するとともに、そのために必要な取組を行うよう努めるものとする。
(啓発活動等)
第七条 国は、本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消の必要性について、国民に周知し、その理解を深めることを目的とする広報その他の啓発活動を実施するとともに、そのために必要な取組を行うものとする。
2 地方公共団体は、国との適切な役割分担を踏まえて、当該地域の実情に応じ、本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消の必要性について、住民に周知し、その理解を深めることを目的とする広報その他の啓発活動を実施するとともに、そのために必要な取組を行うよう努めるものとする。
(国及び地方公共団体の責務)
第四条 国は、本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組に関する施策を実施するとともに、地方公共団体が実施する本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組に関する施策を推進するために必要な助言その他の措置を講ずる責務を有する。
2 地方公共団体は、本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組に関し、国との適切な役割分担を踏まえて、当該地域の実情に応じた施策を講ずるよう努めるものとする。

******************************************

以上の点を踏まえ、我々は以下のことを要求する。

1.関空税関職員のこの度のセクシャル・ハラスメント、プライバシーの侵害、所有権の侵害に値するものであることを認定し、これに対し謝罪せよ。
2.関空税関職員の「北鮮」などの差別用語使用は朝鮮に対する明らかな差別行為であることを認定し、これに対する訂正と謝罪せよ。
3.経済産業省の指示を押し通し反人権的・反人道的な行為を高圧的な態度をもって行ったことによって、我々の被った精神的な苦痛に対して、謝罪せよ。
4.今後二度とこのような措置を講じないことを確約し、職員たちに対する教育啓蒙活動を施せ。
※謝罪文は以下の代表者に送付せよ。
代表者住所:
代表者姓名:)

2017年9月25日
9月4日に朝鮮民主主義人民共和国から関西国際空港、及び羽田空港税関を通過して日本に再入国した
日本の大学・専門学校に通う在日朝鮮人学生・団体職員一同

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「北朝鮮」という呼称について

①はじめに

 この記事を書いている最中に、なんとも許しがたい出来事が起きた。6月28日、修学旅行で朝鮮民主主義人民共和国を訪れていた62人の神戸朝高の生徒たちが、関西国際空港の税関でお土産を全て没収された。
この出来事を受けて29日総聯中央は、緊急記者会見を行い、制裁を口実にした在日朝鮮人への非人道的な行為を強く批判した。

【朝日新聞】修学旅行で北朝鮮土産「税関が不当に押収」 総連が抗議(https://www.asahi.com/articles/ASL6Y5SB8L6YUTIL036.html
【日刊イオ】総聯中央が関空税関当局の不当な押収に抗議する記者会場(https://blog.goo.ne.jp/gekkan-io/e/025f5e9bf8ab5bdd7a1845aa4b2ef178
 
 記者会見で指摘されている通り、今回の朝鮮学校生徒たちに対する行為は明らかな人権侵害行為であり、日本政府は今回の行為について直ちに謝罪し、没収した物を返還するべきである。また、今回の事態が発生した根源である、朝鮮民主主義人民共和国に対する不当な経済制裁も、直ちに撤回するべきである。

 経済産業省のHPを確認すると、「対北朝鮮の輸出禁止措置等について」という項目があり、ここで具体的にどのような法律に基づいて、どのようなものの輸出入が規制されているのかがわかる。簡単に言うと、「人道目的等に該当するもの」を例外として、「北朝鮮」を仕向地とする全ての貨物、「北朝鮮」を原産地又は船積地域とする全ての貨物は、輸出入が禁止されているのである。これが朝高生たちのお土産没収の根拠とされているのだが、もともと国連や各国が行っている朝鮮民主主義人民共和国に対する経済制裁は、核・ミサイル開発を抑止するための、言うなれば国際的な平和を守るためのスマート・サンクション(もちろんこれ自体が不当であることは断っておく)なので、日本の対朝鮮民主主義人民共和国独自制裁は、本来の趣旨とかけ離れた運営がなされていることは言うまでもない。朝高生たちが持って帰ってきたお土産が、どのようにして国際的な平和を脅かすのであろうか。

経済制裁に関する言及はこれぐらいにして、これより詳しい記事は、後に誰かがこの場で記述してくれることを期待する。

私が今回扱いたかったテーマは、「北朝鮮」という呼称についてだ。すでに何回もこの言葉を使っているが、日本政府は法律や省令などの正式な文章で、「北朝鮮」という呼称を利用している。
 また、各メディアも、報道文の中では正式名称は一切使わずに、以下のように「北朝鮮」という呼称を使用している。

―北朝鮮と韓国、10年ぶりに南北鉄道の連結を協議
―日米防衛相が会談、北朝鮮非核化へ連携確認
―外務省に北朝鮮担当課新設、拉致問題など交渉加速狙う
―北朝鮮、「科学技術強国」の野望

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朝鮮民主主義人民共和国に関するニュースは毎日のように流れるが、多くのマスメディアで、正式名称が使用されることはない。ほとんどが「北朝鮮」である。
もはや「北朝鮮」という言葉が日本では定着してしまっているが、そもそも朝鮮民主主義人民共和国という国名をどう略しても「北朝鮮」とはならず、「北朝鮮」とは「朝鮮半島の北側」という意味にしかならないので、「北朝鮮」という呼称は朝鮮民主主義人民共和国の正式名称たりえず、国名として誤った表記方法である。なのになぜ、「北朝鮮」という表記が一般的に使用されているのだろうか。
「日本が朝鮮民主主義人民共和国を国として認めていない」、「「朝鮮」に対する蔑視感情がある」、など、感覚的にはこのように答えることが出来ると思うし、およそ間違ってはいないだろう。しかし今回は、この「北朝鮮」という呼称がどのような経緯で使われるようになったのかについて、一度しっかりと追い、考察してみたいと思う(本稿は森類臣氏の論文『日本のマスメディアにおける「北朝鮮」報道の一考察―「北朝鮮」単独呼称への切り替えと背景の分析を中心に―』(『翰林日本学』15号、2009年、pp.119-141)を参考にした)。

②そもそも朝鮮民主主義人民共和国は日本でどのように呼ばれてきたのか

上記の森類臣氏の論稿によると、例えば『朝日新聞』は、朝鮮半島北部を指す呼称について、1945年8月15日から1948年2月13日にかけて、「北朝鮮」、「朝鮮北部」、「北鮮」を使用していた。この時期はまだ朝鮮が建国されていない時期なので、「北朝鮮」や「朝鮮北部」は言葉通りの意味を成していたのだろう(尚、「北鮮」は植民地期から使用されていた、朝鮮蔑視が込められた呼び方であり、朝鮮半島南部は「南鮮」、「朝鮮南部」と表記されていた)。1948年2月13日から1959年7月11日までは基本的に「北鮮」という呼称を用い、1968年ごろから「北朝鮮」という呼称を使用している。
そして、朝日新聞をはじめとした各新聞社は1971年2月4日に「朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)」という、正式名称と「北朝鮮」の歪な並列表記になった。これは、1972年の札幌冬季オリンピックの前年に行われた1971年プレ五輪で、朝鮮民主主義人民共和国側が「北朝鮮」ではなく正式名称で書く(呼ぶ)ように五輪組織委員会に申し入れたことがきっかけとなっている。日本新聞協会ではこれを受けて、各新聞社の記事の初出は「朝鮮民主主義人民共和」「北朝鮮」を併記することになり、テレビ局では「北朝鮮、朝鮮民主主義人民共和国」と呼ばれるようになった。(ただし、2度目に国名を書く場合や、記事の見出しに関しては「北朝鮮」と書くようになった)。
以降、各新聞社では約32年間に渡り「朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)」という表記が(初出のみ)使用されてきたが、朝日新聞は2002年12月28日付朝刊3面に「おことわり 朝鮮民主主義人民共和国の国名表記について 社告」として、以下のような記事を出した。

「おことわり 『朝鮮民主主義人民共和国』の国名については、中国、韓国のように関係者が納得する適切な略称がないなどの理由から、『朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)』と表記してきました。しかし、北朝鮮という呼び方が定着したうえ、記事簡略化も図れることから、今後、外交記事などでは引き続き従来どおりの表記を使う場合もありますが、その他の記事では『北朝鮮』という呼称を使います。」

  他、調べたところによると、毎日新聞、日本経済新聞もだいたいこの時期に表記を「北朝鮮」に変えており、読売新聞は1999年、産経新聞は1996年から「北朝鮮」単独表記を採用。テレビではNHKが2003年1月1日、深夜0時30分のニュースから「北朝鮮」を使い、他の局もだいたい同じ時期に変わっており、この時期以降は現在まで変わらずに、どのメディアも「北朝鮮」を使用している。

③メディア側の論理と、当時の状況をふまえた考察

 「北鮮」という呼称を使用していた時期は論外だとして、(当然不十分ではあるが)メディアは長い間朝鮮民主主義人民共和国という正式名称を使用していた。にも関わらず、なぜ表記を「北朝鮮」に変更したのか。メディア側の論理はどの社もおよそ先述の朝日新聞記事と同じで、つまり、①「北朝鮮」という呼び方が定着したこと、②記事の簡略化が図れる、という理由で、「北朝鮮」という表記にすることを決めたのである。(他には、例えば「読売新聞」は、①、②に加えて、「他の国も「北朝鮮」と表記している」ことを挙げている)。唯一、NHKだけは上記の理由に加えて、2002年12月に成立した、「北朝鮮当局によって拉致された被害者等の支援に関する法律」でも、「北朝鮮」という呼称しか使用していないことを理由に挙げている。
 「北朝鮮」という言葉が定着していたとして、「北朝鮮」と表記することによって8文字削減できたとして、放送時間が2秒ほど削減できたとして、どれも一国の正式名称を使用しなくてもいい理由にはならないことは、言うまでもない。また、「他の国も「北朝鮮」と表記している」という理由は、確かに英語圏では「North Korea(北朝鮮)」という表記を用いるがこれは、「South Korea(南朝鮮)」と対になっている言葉であり、北を「北朝鮮」と呼び、南を「韓国」と呼ぶ日本とは状況が異なる。また、FIFAやオリンピックでは、「DPRK」と正式名称を用いている。常に「North Korea」を用いているわけではないのである。また、中華人民共和国では朝鮮民主主義人民共和国の略称として「朝鲜(朝鮮)」、大韓民国を「韩国(韓国)」を使用している。中華人民共和国ではそもそも国名として「北朝鮮」という言葉を使っていないのである。
では、メディアはなぜほぼ同時期に表記を変更したのか。この時期は言うまでもなく、朝日首脳会談で金正日国防委員長が日本人拉致を認め謝罪し、朝日平壌宣言を採択した時期である。首脳会談以降の朝鮮民主主義人民共和国に関するニュースは、例えば朝日新聞なら3倍以上に激増し、そのほとんどがネガティブな論調であった。「北朝鮮」という呼称は、このような流れの中で一斉に使用されていき、逆に朝鮮民主主義人民共和国という国名は、日本から姿を消すのである。
メディアの正式な発表があったわけではないが、時代状況を鑑みると、定着がどうとか、記事の簡略化がどうかではなく、政府もメディアも朝鮮民主主義人民共和国を国として認めず、拉致や核開発などをする「北朝鮮」とは強硬な姿勢で相対していくという意思が、メディアや法律への「北朝鮮」表記へと込められているのではないだろうか。

④まとめと個人的考察

これまでみてきてわかるように、「北朝鮮」という呼称は1960年代から使用され、一時期は朝鮮民主主義人民共和国という正式名称も並列で表記されていたが、現在ほぼすべてのメディアで正式名称が使用されず、「北朝鮮」のみが使用されている。それは、2002年の「拉致問題」が決定的な契機だったとみることが出来る。そしてこの時期から、朝鮮民主主義人民共和国に対して否定的な報道が激増し、いわゆる「反北朝鮮」社会が急速に形成され、もともと官房長官時代から「北朝鮮」強硬派で有名だった安倍政権を、現在も支えていると言っても良いだろう。
筆者は、当然「北朝鮮」という呼称を使用するべきではないと考える。理由はシンプルで2つ。1つは言うまでもないが、「北朝鮮」とは正式名称ではなく、朝鮮民主主義人民共和国を国家と認めない不当な呼び方であるからである。もう一つは、こちらの方が大きな理由だが、そもそも朝鮮民主主義人民共和国が「北朝鮮」と呼ぶことを承認していないからである。朝鮮民主義人民共和国は、日本が「北朝鮮」と呼ぶことに対して幾度かにわたって直接指摘、批判をしている。先述の1971年プレ五輪しかり、2003年には国連総会において、日本代表団が「北朝鮮」と呼んだことに対して、朝鮮民主主義人民共和国代表部が「侮辱的な表現」と日本代表団を批判している。また、2003年1月29日付けの朝鮮労働党の機関誌労働新聞は、朝日新聞を名指しにしながら、日本のマスコミの「北朝鮮」呼称を批判する論評を掲載している。このように、当の本人から「その名で呼ぶな」と言われているにも関わらず「北朝鮮」と言い続けるのは、明らかに国家に対する冒涜である。
朝米会談以降、安倍政権はようやく朝鮮民主主義人民共和国との直接対話を模索し始めたそうだ。本気で対話を目指すなら、まずはテレビの前で朝鮮民主主義人民共和国と声を発してみてはどうか。(滉)

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「民族」について考える~激動する朝鮮半島情勢の中、一活動家として思うこと

 『民族』とは何か?
 という問いを私は学生時代から幾度となく問い返している。最近、朝鮮半島情勢が融和や平和に向かう一方で私の問題意識は朝鮮半島情勢に向きながらも自身の民族性に向いてしょうがない。自身の民族性が朝鮮半島に問われているような気がして仕方がないのだ。

 6/12に朝米首脳会談が行われた。間違いなく歴史的な会談であった。しかも今会談はこれまでの朝米関係を間違いなく変えたものとして見られるべきである。朝米コミュニケや6カ国協議の時には「行動対行動」だった原則が今回の会談を通して、「信頼対信頼」に変化したことが最も特筆すべきことではないだろうか。(URL:http://japan.hani.co.kr/arti/politics/30836.html
その証に韓米は「乙支フリーダムガーディアン」の軍事演習を中止した。
(URL:http://japan.hani.co.kr/arti/politics/30903.html) (URL:http://japan.hani.co.kr/arti/politics/30855.html
共和国の非核化を促すための措置であるがこれまでの姿勢としては考えられないことだ。米国が共和国の「信頼ある行動」を信頼しての行動を行なった。

 今日の本題は「情勢によって私たちの民族(性)が問われている」のではないかということだ。私がなぜこのような問いを発するかというと、朝鮮半島が(まだ予断を許さないが)統一に向けて動きだしているという実感を感じることが多い日々で専従の活動家として、その終わりの入口を想像してしまったことに端を発する。「統一してしまったら自分はどうなるのか?」それと同時に「この闘いに溢れる日々から解放される」のではないかという功利的な思考が出てきたのである。私は何かに報われるために活動していたのかと自分の愚かさに愕然とした。現実に差別や苦しんでいる朝鮮人がいれば活動することを決めたつもりで専従になった。しかし、実際は朝鮮半島の情勢が好転しようとすれば朝鮮半島の平和からこぼれ落ちている「どこかにいる孤独な朝鮮人」への想像を容易に飛び越え、「自分の幸せ」やその終わりを想像していたのである。言い換えれば朝鮮半島の平和が訪れれば「私の闘い」は終結すると考えていたのだ。朝鮮半島が平和になろうと、民族的自殺を図ったその朝鮮人の民族性は回復しないのに、だ。それを救うために専従の活動家になったはずだった。それにも関わらず、私の自己中心的な思考は「朝鮮半島の平和」を終点にして思考が打ち止めされてしまった。その時に、朝鮮半島情勢によって自身の「民族(性)」が問われているのだと感じた。その打ち止めされた思考を打破するためにも私は敢えて今、「民族とは何か?」という問いを自身に課したい。

 ※以下は私個人が考えることである。

 私は常に文化的民族性を拒否してきた。それはエスニシティばかりが好まれる日本社会で敢えて民族的文化を推すことが自分の足元をすくうことに繋がるのではないかと直感的に感じていたからだ。自分の民族を形成するのは歴史や理論や哲学であると思ってきた。センチメンタルな「民族性」や情緒感動的な「民族性」は現代日本社会では挫折させられることはあっても、在日朝鮮人運動を担う私を助けてくれたことはなかった。私にとっての民族は反射行為でしかなかった。消されようとする「民族性」を守り、その反射行為として求め、育ててきた。私が「民族性」を育てるために焼べてきた薪はその実反射行為でしかなかった。手放しで「私は朝鮮人だ!」と言えないのだ。何かに攻められないと私は自分を朝鮮人として認識できないという主体性と遭遇したのだ。何が言いたいかというと朝鮮半島情勢がポジティブな方向へと向かうほど私は「民族」とは何か?というものを問われている気がしてならないということだ。
 本来、私という在日朝鮮人という存在を理解しようとする時、自己認識だけではそれは完成しない。「私」という存在を捉えようとする時、それは自己認識の問題ではない。私が朝鮮人であるということは「外部」(=世界)の側が決めることなのだ。

 『言い換えれば、主体性の本質的なものは外部であり、自分自身の案出によってしか自己を認識しないということ、決して内部では自己認識はないということです。内部で自己認識をすると、主体性は死にます。外部で自己認識し、外部で解釈されるとき、主体性は充満し、たしかに対象となりますが、それは結果となった対象です。つまり、本当には対象化できない、主体性というものにそこで出会うのです。』(ジャンポール・サルトル 「主体性とは何か」)

 「私は朝鮮人だ!」という認識を持つ主体性は認識することが不可能であるということだ。では「朝鮮人になりたい」私たちはどうしたらよいのか?それは正しく「外部」を認識することにある。「外部」とは何か?それは社会だ。在日朝鮮人が予期する社会とは日本社会だと想定されがちだが果たしてそうだろうか?私はそうは思わない。私がまたあなたたちが「民族」というものを渇望し、望むのは、真に朝鮮半島社会に「私」自身を投影することができていないからではないだろうか。真に私たち在日朝鮮人が投影するのは自己—外部、民族—朝鮮半島という関係でしか有り得ない。肯定的に在日朝鮮人と自己認識しようとすれば、自己を投影する先は日本社会ではなく、朝鮮半島社会にするべきなのだ。それは在日朝鮮人社会でもなく、間違いなく朝鮮半島に。そうでなければ、(在日)朝鮮人としての主体性は充満されることはない。日本社会に自己を投影すれば、朝鮮人—日本(人)という問いにしかならず、その主体性は手放しで「私は朝鮮人だ!」と言えるものからは遠くなってしまう。なぜなら、朝鮮人—日本という葛藤を生むので、その時点でクリアではなくなってしまうからだ。

 私は以上の点で不十分であるが「未完」な朝鮮人の主体性(客観性)を持つと自覚する。在日朝鮮人として、この朝鮮人としての損傷を自覚し、距離を取ることで私はよくそれを観察することとする。しかし、それでは終わらない。弁証法的な発展を通じて、私は欠陥を帳消しにできるような実践の助けを借りて、欠落した朝鮮人としての要素を補完する。障害と距離を置いて、障害を認識し、その結果、その障害を否定する。間違いなく、実践を伴うことによってしかそれは達成されえない。私にとっての実践というのは、自分の朝鮮人としての損傷を認識し、その損傷を回復するまたは補うような形での実践を指す。(日々の在日朝鮮人社会の発展によって朝鮮半島に近づこうとする試みや朝鮮半島の葛藤を取り除くために行われる一切の行為など)なので、自己を投影する「外部」を朝鮮人として設定する時、そこは朝鮮半島社会であるべきなのだ。よって、朝鮮半島の情勢を知るということは自分を朝鮮人へと近づけることと同義である。目線は常に朝鮮半島へということだ。

 今回、情勢ニュースブログではあるが情勢解説や紹介ではなく、情勢という政治的なものが個人のアイデンティティという内面的なものにどのように干渉しているのかを考えるよい機会になったと思う。このような問いがないと「情勢」はただの情報にしかならなくなってしまう。情勢を情報ではなく、自己と朝鮮半島を近づける実践として認識できるかが重要なのではないだろうか。(秀)

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6.12朝米首脳会談とシンガポール共同声明を支持歓迎する~そして、ある朝鮮人の所感

 歴史的瞬間。この瞬間をどれだけ待ったことだろうか。

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 70年以上続いた敵対関係、戦争状態が終焉に向かおうとしている。
 とりわけ、朝鮮民主主義人民共和国(以下、朝鮮)の人民はどのような心境で今回の光景を目の当たりにしたのであろうか。私自身も勿論そうだが、私は朝鮮人民の姿を想像するとより胸が熱くなる。70年以上に渡る、たった一言では表現できないような、朝鮮の血の滲んだ闘争があったからこそ6月12日が実現したのだ。

 いわゆる「国際社会」(そもそもその用語自体から疑問視だが)といった立場でなく、今回の朝米首脳会談と「金正恩委員長とドナルド・トランプ米大統領の間のシンガポール首脳会談共同声明」(以下、共同声明)を、一人の朝鮮人として主体的に受け止めたいと思っている。

 朝鮮は、今回の首脳会談と共同声明について、6月13日に、朝鮮中央通信を通して、《조미관계의 새 력사를 개척한 세기적만남 - 력사상 첫 조미수뇌상봉과 회담 진행》(朝米関係の新しい歴史を開拓した世紀的対面~史上初めての朝米首脳の対面と会談が行われる)という見出しで報道した。(リンクがうまく飛ばないのでURLは우리 민족끼리より)
 (URL)→ http://www.uriminzokkiri.com/index.php?ptype=great&subtype=songunload&no=6303
 報道では、これまでの朝米関係について数度も強調された。(以下引用)
  地球上で最も長きにわたる歳月、先鋭に対立し、持続してきた朝米間の極端な敵対関係にピリオドを打ち、両国人民の利益と世界の平和と安全のための新しい未来を開いていこうとする両首脳の確固たる決断と意志によって、今世紀に初の朝鮮民主主義人民共和国とアメリカ合衆国の首脳会談が行われる。
  朝鮮半島が二分されて対立と反目の歴史が流れてきた70余年ぶりに初めて朝米両首脳が和解に向けた第一歩を踏み出して対話の場に立ち合うことになった。
  朝米両首脳は、数十余年間持続してきた敵対的な朝米関係に終止符を打ち、朝鮮半島に平和と安定が訪れるようにするうえで重要な意義を持つ実践的問題について率直な意見を交わした。

 朝鮮半島はずっと「戦時状態」であった。「朝鮮戦争」の停戦協定以降も、米軍は南に留まり、米「韓」軍事演習を継続し続けた。
「戦時状態」下で、米国がまずずっと朝鮮を信用してこなかったし、それが故、朝鮮も米国を信頼できなかった。そのような不信感がどれほど朝米関係を膠着させてきたのだろうか。
 アメリカの朝鮮に対する不信感は、1990年代以降のいわゆる「核疑惑」によって加速し、とりわけ朝鮮を「正常な国家」としてではなく、「悪の枢軸国」、「ならずもの国家」となどど朝鮮を悪魔化し、様々な制裁と圧迫を継続的に課した。そして、去年は一触即発の核戦争に突入する直前、まさに超緊張状態に達した。
 そのような、「戦時状態」下、敵対と不信の70年以上の歴史の中で史上初めて両国の首脳が対面したのである。
 その対面の光景は、「世界最強国」アメリカと「悪の枢軸国」朝鮮といった不均等な国家関係ではなく、まさしく「対等な国家間」同士の首脳の対面のように感じた。金正恩委員長が今年2018年の「新年の辞」で発言されていたように、朝鮮が「世界が公認する戦略国家」の姿として私の目には映った。
 
 しかしながら、朝鮮半島の平和と、朝米関係の改善を真に望まない者たち(少なくない各国メディア)により、今回の首脳会談と共同声明について、その意義を軽視する論調が目立つ。
 CVID(完全(Complete)かつ検証可能(Verifiable)で不可逆的(Irreversible)な非核化(Denuclearization))の用語が入っていないだとか、過去の朝米関係の合意に比べ(1994年の米朝枠組み合意、2005年9.19の6者合意)あまりに具体性に欠けるだとか、そういったものである。
 今回の首脳会談と共同声明について、朝鮮新報では、6月13日に、《세기적 조미대결의 청산, 세계사의 대전환~싱가포르 쎈토사섬에서 진행된 첫 수뇌회담》(世紀的朝米関係の清算、世界史の大転換~シンガポールセントーサ島で行われた初の首脳会談)という記事を掲載している。
 (URL)→ http://chosonsinbo.com/2018/06/013/
 記事では、共同声明の核心について、以下のように整理している。(以下引用、筆者訳)
  朝米首脳会談に先立ち、朝鮮半島比較ではなく「北朝鮮の完全で検証可能で不可逆的な非核化(CVID)」に焦点を合わせ、それが即時為さなければならないという主張が流布された。それは歴史上、初めて行われる朝米首脳会談の歴史的意味を否定して矮小化する情報操作、世論誘導に過ぎない。どちらか一方の屈従に、もう一方が保障する取引方式は互いに核武器を保持し闘う2国間で成立する訳がない。
  (中略)朝鮮の最高指導者と対面したアメリカ第45代大統領ドナルド・トランプ大統領は第二次世界大戦以降、ハリー・S・トルーマン以来の歴代政権下で面々と繋がれてきた朝鮮に対する敵視と圧殺の企図に終止符を打つことを確約したのだ。

 まさにその通りである。CVID云々よりも、70年以上にも渡る敵対関係の終止符を打つ、それに最も大きな歴史的な意義がある。
 だからこそ、今回の共同声明について、しっかりとその声明を順番を持って見るのが大切なように思う。
 ※共同声明文の日本語訳は以下から見ることができる。(朝鮮新報サイト)
 (URL)→ http://chosonsinbo.com/jp/2018/06/yr20180613-1/

 この声明文は1~4だけではなく、その前文の書かれている順序も大切だと私は感じている。その前文部分から今回の会談と声明のおいて大切な順で書かれているからである。
 声明の1~4について便宜上、「1.新たな朝米関係の樹立」、「2.朝鮮半島での平和体制構築」、「3.板門店宣言の再確認と非核化」、「4.遺骨発掘と送還」とまとめてみることとする。
 私は役回りで組織の文書とかを作る機会が多いのだが、その時とまったく一緒で、文書というのは大事な順番で叙述する。それらの重要度が同レベルなのであれば、おそらく‐(ハイフン)や・(テン)などの記述になっていただろう。
 今回の声明文は、1→2→3→4の順番で重要だということである。
 
 まず何よりも「1.新たな朝米関係の樹立」が一番大事だということだ。
 前述して書いたが、「戦時状態」、敵対関係と相互不信の70年状態から、まずは相互に信頼を積み重ね、関係改善していくと言うことである。ようは信頼関係の構築、新たな朝米関係樹立がなければ何も始まらないということだ。
 ちなみに、少なくないメディアの論調として、過去の合意と比較して具体性がないとかという指摘がある。確かに1994年の米朝枠組み(ジュネーブ)合意や2005年9.19の6者合意はより具体的な記述があるが、これらの合意と今回の共同声明の大きな違いはその順序である。
 これらの過去の合意は「非核化」→(「平和体制の構築」 or 「関係改善」)という順になっていて、その順番が逆だということである。すなわち、非核化がスタートで、非核化をしなければ始まらないということである。
 【参考】米国と朝鮮民主主義人民共和国間の合意枠組み ※HP「核情報」 (URL)→ http://kakujoho.net/susp/us-dprk_frmwk.html
 【参考】第4回六者会合に関する共同声明(仮訳) ※外務省HP (URL)→ https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/n_korea/6kaigo/ks_050919.html
 これらの合意も今回の声明と同じように、行動対行動原則ではあったが、結局「関係改善」がなされていないまま履行していかざるを得なかったため、初めの段階で躓くことになる。「関係改善」がなされていなかったため、とりわけアメリカの朝鮮への不審が拭えなかったからであろう(アメリカが信用しようとしたかも今となっては疑問ではあるが)
 ずっとこの順序=「非核化から」を主張してきたアメリカが、今回は逆の順序で、「1.新たな朝米関係の樹立」からしていこうということを朝鮮との間に合意したことがもっとも大きな意味がある。
 信頼とは確かに実質的行動をもって証明していくことで積み重ねていけないのは勿論ではあるが、今回の朝米首脳会談に至るまでの過程と、当日の対面などを通して既に少しずつ信頼関係は芽生えはじめているように思う。
 実際、会談に至るまでに朝鮮は、米国人3人を解放したし、また豊渓里の核実験場完全廃棄に至った。(《우리 민족끼리》HP、5月25日付。(URL)→ http://www.uriminzokkiri.com/index.php?ptype=photo&pagenum=&no=6184
 また、両首脳の会談時の発言全文(日本語訳)は、東京新聞サイト(6月13日付。(URL)→ http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/201806/CK2018061302000133.html )から、会談後のトランプ大統領記者会見(日本語訳)は、日本経済新聞サイト(6月16日付。(URL)→ https://www.nikkei.com/article/DGXMZO31865230W8A610C1I00000/ )から見ることができるが、トランプ大統領は以下のように発言している。
 (一対一会談後) ※上記東京新聞サイトより引用
 「(会談)はとても良かった。(われわれは)素晴らしい関係にある。大きな問題、大きなジレンマを解決するだろう。われわれは共に取り組み対処する。一緒に取り組むのが楽しみだ。(中略)(会談では)非常に前向きな進展があった。誰もが予想したよりも本当に良かった。」
 (記者会見) ※上記日本経済新聞サイトより引用
 記者  「金氏を信頼していますか。」
 大統領 「信頼している。ここまでのやりとりは話し合いだけだったが、それなしでは実現できなかったことだ。中でも新しい交渉チームの発足が非常に重要だった。われわれのチームは素晴らしい。金氏の強い意志を私は感じる。

 このように芽生え始めた信頼関係結果だろうか。会談では米「韓」軍事演習の中止についても話し合われ、実際に、米国と南朝鮮は、8月に予定していた合同軍事演習を中止することで合意した。実に24年ぶりだという。
 【参考】米韓、8月の合同軍事演習中止を決定 ※ロイター、6月18日付 (URL)→ https://jp.reuters.com/article/us-korea-military-idJPKBN1JE2YA

 これによって今後、朝鮮側も「それ相応の次の段階の追加的な善意の措置を講じていく」(既出、13日付、朝鮮中央通信)であろうし、その過程でより信頼関係を積み重ね、「2.朝鮮半島で平和体制構築」に繋げていくことが予想される。
 4月27日の「板門店宣言」に沿って年内に「終戦宣言」が出るかもしれないが、「終戦宣言」はあくまでも平和体制構築までの中間地点といった位置付けで、(朝米間の信頼関係が強固になってさえいれば)そのステップを飛ばされ、南朝鮮と中国まで合わせ4者により、「平和協定」が締結されるかもしれない。4者による「平和協定」についてはトランプ大統領の会談後記者会見で以下のように述べている。
 (記者会見) ※既出日本経済新聞サイトより引用
 記者 もう1点。和平条約(ママ)への署名は金委員長とのみ交わす予定ですか。韓国や中国も署名に加わりますか。
  トランプ氏 韓国や中国にも加わってもらいたい。法的には問題があるかもしれないが私は気にしない。中国と、もちろん韓国も加われば素晴らしい。

 そうなれば、その「平和協定」の中身に、重要な意味を持つ4者(とりわけ米朝)不可侵や、朝鮮半島近辺での合同軍事演習の永久的中止といった内容が盛り込まれるであろうし、そこにそのまま「終戦宣言」も含まれるかもしれない。在韓米軍の完全撤廃問題はそのような内容の「平和協定」さえ効いていると朝鮮半島の平和体制には直接的な影響はないので、あとは米国と南朝鮮間での問題になり、次のステージの問題のように思う。(完全撤廃に至るには南朝鮮の中で在韓米軍不要の世論が向上していく必要があるように思う。)

 「3. 板門店宣言の再確認と非核化」であるが、「1.新たな朝米関係の樹立」し、「2.朝鮮半島で平和体制構築」されることにより、「完全なる非核化」が達成されていくように思う。「完全なる非核化」とは、あくまでも入り口ではなく出口/ゴールで、時間をかけてなしてとげていくものなのだ。首脳会談後のポンペオ国務長官の発言によると、トランプ大統領の任期内、2021年1月までに達成したいようである。
 【参考】北朝鮮非核化「大統領任期内に」ポンペオ米国務長官 ※日本経済新聞、6月13日付 (URL)→ https://www.nikkei.com/article/DGXMZO31739950U8A610C1MM8000/
 
 ちなみに何度が出ているこの「CVID」という単語について、若干触れざるを得ない。そもそも、今回の会談においてCVIDは主要な論点では無かったことについて、大統領自身がこう話してしまっている。
 (記者会見) ※既出日本経済新聞サイトより引用
記者:確認可能で、不可逆的な非核化(CVIDのこと、筆者付)に向けて、金氏にどうやって圧力をかけるのですか。
  トランプ氏:やったよ、正直言って。
  記者:なぜそのような詳細が合意文書に含まれていないのですか。
  トランプ氏:時間がなかったからだ。ここには1日しかいないのだ。何時間も集まって集中的に(交渉を)進めたが、これから はプロセスの問題だ。彼らがもう着手してないと聞いたらな、驚きだよ。もう始めただろう、基地を爆発させて。実験基地を吹き飛ばしてな。でもこれは言っておくが、彼は、来る前に知ってたんだよ。まあ、驚きはなかったということだ。前から俎上(そじょう)に上がってなかったわけじゃない。以前にも話し合ったことだ。マイク(・ポンペオ)が北朝鮮の相手方に、強い態度で話し合ってきた。向こうも知っていたんだ。もし、この点に賛成しなければ私がどんな合意にもサインなんてしないってことを。だから知ってたんだな。だからきょう、それが大きな論点(CVIDのこと、筆者付)というわけでもなかったんだ、本当は。この点についてはもう既に(話し合いを)やってたから。他のどんな内容よりも。だって結局この点に尽きるからな。ここに我々が着く前にもう終わってたんだ。だからきょう話し合いにこの点が上ったとき、見れば分かるが、言葉使いは非常にはっきりとしたものだ。文書の中にある。

 また、ここに興味深い記事がある。《자주시보》の《문정인특보,CVID는 그저 한 보좌관이 만든 말일뿐》(ムンジョンイン特報、CVIDはただ一人の補佐官が作った言葉に過ぎない)という見出しの記事だ。※(URL)→ http://m.jajusibo.com/a.html?uid=40198
 ※以下、上記サイトより引用、筆者訳
  (前略)ムンジョンイン特報は、CVIDと完全な比較化は内容上大きな違いはないと主張した。「完全な」という言葉の範囲をどこまで設定するかは協商を通してしないといけないことはあるけれど、完全な非核化を為そうとすると、既に作った核武器はもちろん、製造施設も当然廃棄しないといけないので、不可逆的な非核化にならざるを得ないし…(中略)そして、ムンジョンイン特報は「CVID」という用語は2003年12月にリビアが核廃棄をした当時、ジョン・ボルトン国務部政務担当次官のマーク・グルームブリッジという補佐官が作った用語で(すなわち、高位層で戦略的意味を含め作った概念ではなく、ただ一人の補佐官が作った用語で)そんなに大きな用語ではなかったのに…
その他にも、南のTbsの市民放送、6月13日付で公開された《김어준의 뉴스공장(キム・オジュンのニュース工場)》で、元統一部長官丁世鉉氏が興味深いことを言っている。(37:30~)》 (URL)→ https://www.youtube.com/watch?v=G17DoqaSq4M&t=1868s
 (丁世鉉氏の発言抜粋、筆者訳)
  「CVIDという言葉を作ったのはまさにあのボルトンです。2002年ブッシュ政権が2年目になる年にボルトンがソウルに来ました。その時、ボルトンと青瓦台で話されたことを林東源(当時外交安保統一特報)から間接的に聞きました。朝鮮がクリントンの時にプルトニウム核ブログラムを中断したのは確実だけど、裏でウラニウムプログラムを新しく始めたのではないかいう疑惑があると。核爆弾の作成は2つの手段があります、プルトニウムとウラニウム。ウラニウムの方がどちらかといった作りやすいです。朝鮮がウラニウムプログラムを稼動させたのではないかと。朝鮮のウラニウムプログラム稼動の疑惑について、アメリカに証拠(物証)があるのか?と聞いたところ、朝鮮の状況を総合的に判断すると稼動させているという心証があると答えたと言います。心証だけを持ってどうやって中断させるのかと聞いたところ、私たち(アメリカ)が追求して継続して圧迫をかけると、自白するだろうと。朝鮮をひたすら叩けば何か出るんじゃないかと。朝鮮がそのようなものはないと言ったにも関わらず、朝鮮がそれを稼動という風に作っていった。その過程に生まれた用語がCVIDです。すなわち、朝鮮を信じられないので、CVIDという言葉を作ったんです。
  丁世鉉氏が言っているように「完全かつ検証可能で不可逆的な核廃棄」という用語自体が相手国に対する不信感から来る用語でしかなく、信頼関係があればまずこういう用語にはならない。この用語が生まれたであろう2000年代以降は、まさに米国の朝鮮に対する、不信感と敵対の真っ只中だった。
 また、ムンジョンイン特報が言うことに加え、本当に「用語通り」の核放棄と言うことを考えてみると、核関係施設、軍事施設、科学者、科学記述まで、全て放棄ということになり、軍事情報の全開示、すなわち現実的にその国家を屈服させることでしか、不可能のように思える。朝鮮がそのようなことを望む訳ないし、そのような前提での事前交渉が行われていたら今回の首脳会談自体は開催されなかったであろう。 「戦略国家」の地位に達した今の朝鮮に、不信感を漂わせ、「大国」が「小国」を屈服させるような用語は、今回の共同声明に入るわけがないのは明らかである。

 次に、「4.遺骨発掘・返還」については実際に行われていくだろうと思う。
 朝鮮は、4月20日に行われた朝鮮労働党中央委員会第七期第三次全員会議で、2013年に掲げた経済建設と核武力建設を並進していく戦略的路線―並進路線の勝利を宣言、社会主義経済建設に総力を集中していくことが決定した。そのため(社会主義経済建設に総力を集中するため)にも今回の首脳会談と共同声明を着実に履行し、新たな朝米関係を樹立→朝鮮半島の平和体制を構築していくことが重要である。この「4,遺骨発掘・返還」を確実に履行していく過程で相互の信頼関係を積み重ねていくだろう。
 また、これに関しても先ほどと同様に丁世鉉氏が興味深いことを言っている。(前述映像、47分~)かれによると、1994年の朝米枠組み合意の後、クリントン政権時代に、この遺骨調査は事業はある程度進められたとのことで、約6000の遺骨があることが確認されているという。

 今回の歴史的な首脳会談と共同声明のもう一つ大事だなと個人的に思うのは3項目の「朝鮮民主主義人民共和国は…板門店宣言を再確認し、」の部分である。主語が朝鮮は…でとなってはあるが、これを共同声明の中に盛り込むことで、アメリカもある程度、「板門店宣言」を意識した上で今後動くことが予想される。
 アメリカからすると、去年「火星-15号」(ICBM)の完成により、朝鮮の核武力が完成した後、その「脅威」を取り除けさえすればよかったはずなので、「朝米関係だけ」を見ればよったであろう。北南の接近や統一問題は大きな関心ごとにならなかったはずである。
 順序として朝米首脳会談の前に、4.27北南首脳会談と板門店宣言、5.26北南首脳会談(この会談が、中止になりかけていた今回の会談を結果的に開催されるに至った大きな契機になったことは言うまでもないであろう)があったことが大事だった。朝鮮半島の平和体制構築、朝鮮半島の統一問題を우리 민족끼리(私たちの民族同士で)解決していくんだということを、それらの一番の妨げになってきた米国に認識させる、朝米ではなく、北南朝鮮で米を縛る、という意味があるのではないかと考えている。

 一人の朝鮮人として今思うことは、今後の展望は明るい、ということだ。それは、70年の「戦時状態」、敵対関係だった、朝米関係において(また北南関係において)、信頼の芽が生まれはじめているからだ。その信頼をより強固にしながら、関係を改善していく、それからやっていくのだから。
 確かにアメリカ国内葛藤には若干の憂慮はある。
 今回の共同声明に対する評価は米国内でおおよそ50%のようだ。
 【参考】 トランプ氏の北朝鮮問題対応、米国民の約半数が支持=世論調査 ※ロイター、6月13日付 (URL)→ https://jp.reuters.com/article/northkorea-usa-poll-idJPKBN1J93CQ
 また、今回の共同声明を「条約」として批准するためには米上院の出席議員の3分の2の賛成を得る必要があるが、そこまでの実現可能性は現状で言うとかなり厳しい。だからと言ってそれで今回の声明がまったく意味を為さないわけではない。トランプ大統領としても、今回の共同声明を行政合意として履行していき、その履行の過程≒平和体制構築・非核化の過程(アメリカで言うと最重要事項)を国内に可視化していくことが、秋にある中間選挙においてプラスの影響をあることは明らかである。

 今、まさに歴史的転換点にいると感じている。真の意味での東アジアの冷戦の解体の序幕にいるという認識だ。そういう意味で世界史的局面、世紀的局面だと思っている。
 ただ、この歴史的瞬間に生きながら、同時に自分は何をやっているんだ/やってきたんだという自責の念にも駆られる。朝鮮民族闘争史の中で私はちゃんと闘ったきたのか/闘えているのかと。本当に毎日のように激動する朝鮮半島情勢を入念にチェックしながら、そして何度も自身の姿勢について自問自答しながら、活動を続けていかなければならないと思う今日このご頃である(洪)

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「板門店宣言」履行へ確かな前進を~南朝鮮国会批准同意と統一地方選挙

4月27日に実現された北南首脳会談は北と南、そして海外に在住する同胞の胸に統一への希望を抱かせてくれた。金正恩委員長と文在寅大統領が結んだ板門店宣言をきっかけに朝鮮半島がようやく統一へと歩みだしたかのように思われるが、実は南朝鮮では国会の批准を得ていないため、板門店宣言には法的拘束力がない。

事実、2000年の6.15、2007年の10.4宣言のどちらも国会の批准を得ることができなかった。政権交代した2008年以降、10.4宣言で約束されていた北京五輪での同時入場は白紙に帰し、朴槿恵政権時には開城工業団地の運行がストップされた。「韓」米合同軍事演習はこれまでにない規模で行われ、一時は斬首作戦と題する北の指導者の暗殺を前提とした演習が繰り広げられ、朝鮮半島情勢は大きく後退した。「失われた10年」間を振り返ると、廬武鉉政権をそばで支えた文在寅大統領の批准獲得への熱意はただものではないだろう。

[参考]板門店宣言「国会同意」受けることに(ハンギョレ新聞日本語版、4月28日付)
http://japan.hani.co.kr/arti/politics/30425.html

国会通過の鍵を握るのが、6月13日に投開票される統一地方選挙だ。
文在寅大統領が所属するトブロ(共に)民主党(以下、民主党)は北南合意文発表の1カ月も前から国会批准同意を推し進めていく準備を進めていたが、対する最大野党の自由韓国党は批准同意に反対の立場を表明している。板門店宣言の国会通過を実現するためには本会議で在籍議員の過半数の出席に過半数の賛成が必要である。在籍議員293人のうち、賛成派の民主党、平和党、正義党の議席が141席と、残り7議席に懸かっている。

[参考]'판문점 선언' 국회비준 추진… 한국당 "안된다"(「板門店宣言」国会批准推進…韓国党「駄目だ」)(朝鮮日報、4月30日付)
http://news.chosun.com/site/data/html_dir/2018/04/30/2018043000159.html

しかし、今後の展望は明るい。韓国ギャラップの世論調査によると、北南首脳会談以降5月1週目の時点で文在寅大統領の支持率は83%を記録し、歴代大統領のうち最高値を達成した。北南首脳会談で得た評価を土台に、地方選挙期間に繰り広げられる与野党の政策論争中に板門店宣言の批准獲得への動きを醸成していくことが予想される。

[参考]文大統領、就任1年支持率83%…歴代大統領のうち最高値(ハンギョレ新聞日本語版、5月4日付)
http://japan.hani.co.kr/arti/politics/30496.html

板門店宣言をめぐる議論はすでに統一地方選挙に大きく影響があるようだ。自由韓国党の京畿道支部がある場所であえて出馬した若手のイ・ヒョング民衆党議員は「6.13地方選挙では‘板門店宣言の時代にそぐわない’自由韓国党にたったの一票も投ずるべきではないと訴えることが自分の選挙運動」だと主張している。

[参考]“6.13지방선거에서 자유한국당에 단 1표도 주지 말아야 한다”(6.13地方選挙で自由韓国党にたった一票も投じてはいけない)(뉴스타워、5月22日付)
http://www.newstower.co.kr/news/articleView.html?idxno=56336

また、KBSニュースによると、広域自治体17カ所の首長選で民主党は現有の9首長から12~14首長に拡大する見通しで、世論調査機関リアルメーターが7日に発表した調査によると、民主党の支持率は52%で、保守系の最大野党・自由韓国党の18・5%を大きく引き離している。

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(写真は더뉴스코리아から引用)

6.15、10.4宣言の教訓に学び、国会通過を通して「板門店宣言」履行へ確かな前進をすることで、今回こそは統一にむけて最後まで駆け抜けていかなければならない。

明日には一方で歴史的な朝米首脳会談が開催される。6月12日、13日と目が話せない期間になりそうだ。(智)

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歴史的な第4回北南首脳会談について

 4月27に3回目となる北南首脳会談が行われ、板門店宣言が発表された。

 その後、板門店宣言履行のために5月16日に行われる予定であった北南高位級会談が中止となった。米“韓”合同空軍演習「マックスサンダー」が行われたためである。

 そのような中、5月26日に4回目となる北南首脳会談が行われた。
 
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 この会談に対する朝鮮民主主義人民共和国の公式な立場について、労働新聞では個人名で「板門店宣言の履行を推し進める歴史的事変」というタイトルの記事が6月2日付で掲載された。ここの一部を紹介したい。

(以下、引用文、訳筆者)

 「…朝鮮半島情勢が劇的な転換の局面を迎えている時に歴史の地、板門店において行われた第4次北南首脳相逢と会談は内外反統一勢力がどれだけ悪辣で周辺情勢がどのように変化しようともウリ(我が)民族同士が意と力を共にすれば北南関係改善と朝鮮半島の平和繁栄のための道を力強く歩んでいくことが出来るということを明白に示してくれた。

…今日、民族の志向と要求に沿って北南関係を発展させながら民族の和解談合と朝鮮半島平和繁栄の流れを積極的に推し進めていくために板門店宣言を徹底的に履行することが何よりも重要である。

…板門店宣言には北南関係の全面的で画期的な改善と発展を成し遂げ、朝鮮半島での軍事的緊張状態を緩和し、戦争の危険性を実質的に解消し、恒久的で強固な平和体制構築のための実践的な問題たちが具体的に明示されている。…分裂の障壁を越え、近い未来に必ずや祖国統一の歴史的偉業を成し遂げようとする確固たる決心がある。板門店宣言の採択こそウリ民族の分裂と対決という悲劇の歴史に終止符を打ち、平和と繁栄、統一の新たな時代を創造していく強烈な志向と意志の表れである。

歴史的な板門店宣言を履行し、北南関係の根本的な改善と朝鮮半島の平和繁栄を成し遂げるのは重大な課業である。

祖国統一運動史には北南間でどれだけ良い合意がなされ、立派な宣言が採択されたとしてもそれは履行できなければ積もり積もった不信と対立を解消できず、結局祖国統一偉業が難関と障害にぶつかるという深刻な教訓が刻まれている。
二度とこのような歴史が繰り返されてはならない。民族の志向と念願が詰まった板門店宣言を徹底的に履行し必ずや平和と繁栄、統一の明るい未来を持ってこなければならない。全民族と世界を前に約束した板門店宣言はどんな情勢波動や周辺環境にも左右されることなく北と南が主となり一貫して履行していかなければならず、互いが共に手をつなぎ宣言の履行に有利な条件と環境を主導的に作っていかなければならない。北と南は第三国を気にしたり打算をしたりすることなく板門店宣言で明かされた内容を誠実に履行し、北南関係を画期的に発展させていかなければならない。

…板門店宣言を徹底的に履行していくところに北南関係の持続的な発展及び平和と繁栄、統一がある。
北南、海外のすべての同胞たちはウリ民族同士の旗印を高くあげ、板門店宣言の履行のための闘争に一丸となって立ち向かわなければならない。


以上で言及されていることより、今回行われた第4回北南首脳会談が、板門店宣言を断固として履行していくという強烈な意思表示と捉えることができるのではないだろうか。そういう意味では宣言が履行されていくであろう明るい未来が見え、まさに歴史的と言えるだろう。

この会談が行われた後、5月16日に中止となった高位級会談が6月1日に行われる運びとなった。
高位級会談では、①14日に軍事的緊張緩和などに向けた将官級軍事会談、②18日にインドネシアで今夏開かれるアジア競技大会への共同出場などに関する体育会談③22日に北朝鮮の金剛山(クムガンサン)で離散家族再会のための赤十字会談の開催を合意した。
また、同日行われた金英哲朝鮮労働党副委員長とドナルド・トランプ米大統領の会談では、朝米首脳会談の開催が決定づけられ、朝米首脳会談時に終戦宣言に関する事案を討議する可能性があるという言及まであった。

私は、板門店宣言の徹底履行のためにウリ民族同士互いを裏切らず一丸となって闘争していこうという共和国の正式な立場を積極的に支持すると同時に来る6月12日に行われる史上初の朝米首脳会談が朝鮮半島情勢が好転する契機となることを心から願っている。(樺)

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在日朝鮮人の民族教育と自決権〜朝鮮学校「高校無償化」裁判と総連・共和国〜(下)

2.在日朝鮮人の自決権と総連・共和国

 このように今日に至るまで、在日朝鮮人の民族教育や運動において共和国やその指導者を支持、肯定すること自体が否定され、攻撃され続けてきている。2000年代以後、とりわけ平壌宣言以後、日本による共和国制裁のなかで、共和国との紐帯を問題にした朝鮮学校に対する攻撃、諸権利の侵害が一層顕在化することとなった。2003年には大学受験資格問題にて、朝鮮学校のみを別枠で大学が「個別審査」するという制度が採用され、外国人学校の中でも朝鮮学校の民族教育に焦点を絞った制度上の差別、排除が続いた。そして第一次安部政権が発足し、日本において共和国・総連バッシングが加熱するなかで、強制捜査という形で総連、朝鮮学校に対する権利侵害が横行することとなった。
 2006年当時、警察庁長官だった漆間巌氏は、「いろいろな形で北朝鮮に圧力をかけるような事件」に「大いに取り組むように、都道府県警察を督励」し、「北朝鮮に日本と交渉させる気にさせる」ために「北朝鮮が困る事件の摘発に全力を挙げる」と述べた。そして実際に、総連本部、商工会、留学同、滋賀朝鮮初中級学校など、様々な総連団体、朝鮮学校に対する強制捜査が行われた。
 こうした滋賀朝鮮初中級学校に対する強制捜査(2007年1月28日)については、日弁連からも警告書が発せられることとなった。滋賀朝鮮学校などから人権救済申立を受けた日弁連は大阪警察本部に対して、「被疑事実との関連性は必ずしも明白ではなく、差押の必要性を欠き、第三者方捜索の特別の要件も充たしていない違法なもの」であると警告したのである。そして、「この捜索差押が行われた背景には、朝鮮民主主義人民共和国政府に圧力をかけるという政治的目的の存在が疑われる」として、次のように指摘した。

朝鮮民主主義人民共和国と日本政府との間に、拉致問題、核開発問題、ミサイル発射問題などの敵対的政治状況があることを背景として、同国を支持する朝鮮総聯とその関連団体に対する敵視や反感の風潮が国内に醸成されている中で、朝鮮学校とその学童・保護者の人権が問題となっている。

日本弁護士連合会HP「朝鮮学校強制捜査人権救済申立事件(警告)」
https://www.nichibenren.or.jp/activity/document/complaint/year/2010/2010_4.html

 このように日本における「北朝鮮」嫌悪、反共和国敵視政策・制裁のなかで、共和国との関係を問題にした民族教育弾圧がなされたのである。この後も同様に、朝鮮学校弾圧に対する警察力が動員され、2015年9月6日にも北海道朝鮮初中高級学校に対して強制捜査が行われた。

週間金曜日オンライン「政治的意図丸出しの北海道朝鮮学校への強制捜査――マスコミ動員し差別を助長」
http://www.kinyobi.co.jp/kinyobinews/2015/10/27/%E6%94%BF%E6%B2%BB%E7%9A%84%E6%84%8F%E5%9B%B3%E4%B8%B8%E5%87%BA%E3%81%97%E3%81%AE%E5%8C%97%E6%B5%B7%E9%81%93%E6%9C%9D%E9%AE%AE%E5%AD%A6%E6%A0%A1%E3%81%B8%E3%81%AE%E5%BC%B7%E5%88%B6%E6%8D%9C%E6%9F%BB/

 また、2006年7月以降、総務省が総連関連施設の「公益性の有無などを厳正に判断」するとして固定資産税の減免措置見直しの通達を出したことを契機として、全ての地方自治体が1972年以降認められるようになった総連関連施設に対する固定資産税減免措置を取り消した。さらに、2010年以後は「高校無償化」排除と並行して、地方自治体による朝鮮学校に対する補助金の打ち切りが相次いだ。こうした補助金打ち切り・削減は、「北朝鮮」が「不法国家」、「暴力団」であるという認識のもとで大阪府知事(当時)が補助金を打ち切ったのを嚆矢としたものであり、共和国に対する制裁、敵意を背景としたものだった。
 2016年3月29日には、文科省は朝鮮学校が所在する28都道府県に対して、「朝鮮学校に係る補助金交付に関する留意点について」という通知(いわゆる「3.29」通知)を発した。その通知にて日本政府は、「朝鮮学校に関しては、我が国政府としては、北朝鮮と密接な関係を有する団体である朝鮮総聯が、その教育を重要視し、教育内容、人事及び財政に影響を及ぼしているものと認識しております」として、地方自治体による補助金打ち切り・削減を示唆したのである。結果、2017年度に朝鮮学校に補助金を支給した地方自治体は12道府県にまで激減した。
 以上のように朝鮮学校に対する差別、弾圧は共和国に対する敵視政策・制裁を背景としてなされたものだった。一方、今年2月23日には、総連中央本部の門扉に5発の銃弾が撃ち込まれるというテロ事件が発生した。また、2017年9月23日には麻生太郎副総理は「北朝鮮有事」に際して共和国からの難民を「射殺」することも含め検討することを示唆する発言を行った。さらに、今年3月11日には石川県在住の有権者(日本国民)は、兵糧攻めによって共和国国民を餓死させることを教唆(2017年6月21日)した谷本正憲知事を再選し、現職知事最多となる7選を果たさせた。
 こうした状況下で尊重されるべき在日朝鮮人の権利、人権の内実とは何だろうか。それは「朝鮮学校に通う子どもたち」の学習権、教育権だけに留まらない問題である。共和国と紐帯をもつ在日朝鮮人、民族団体に対する攻撃が続くなかで問われるべきは、共和国と紐帯をもつ在日朝鮮人に対する弾圧を容認するかどうかである。朝鮮学校の教員の権利であれば踏みにじっていいわけではない。総連議長宅であれば強制捜査していいわけではない。共和国国民であれば餓死させていいわけでもなければ、総連中央本部職員であれば射殺していいわけでもないのである。
 認められるべきは共和国を支持する在日朝鮮人も含めた在日朝鮮人総体の権利である。共和国を支持し、共和国と紐帯をもつ権利こそ尊重されなければならないのである。旧宗主国に在住する朝鮮人が分断状況のなかでいかなる政治・経済体制を望み、支持するかは在日朝鮮人自身が決定する問題である。朝鮮学校の営み、民族教育の尊重と在日朝鮮人の自決権の尊重は不可分の問題として捉えられなければならない。
 日本の植民地支配からの解放後、在日朝鮮人は奪われた国、言葉、文化を取り戻すために、新朝鮮の建設に積極的に参与しようと活動を展開し、権利擁護運動や民族教育を発展させてきた。そうしたなかで各地で国語講習所が設置され、民族教育が営まれてきたのであった。
 当時、朝鮮学校を設立し、最も多くの在日朝鮮人を網羅していた在日本朝鮮人連盟(以下、朝連)は、朝鮮の独立、政府樹立を促進する諸活動を繰り広げた。解放後の在日朝鮮人の諸権利の抑圧と朝鮮の独立とを不可分の問題として捉えたためである。
 在日朝鮮人の民族教育もこうした新朝鮮建設のための活動と連関して発展した。たとえば、教員組織としてはじめて結成された在日本朝鮮人教育者同盟東京支部は結成大会(1947年6月28日)にて、「綱領」として「我々は、全国的団結を強化し、民主朝鮮建設の理念のもとで教育の充実を期する」、「我々は、在日同胞の民主的諸組織及び本国と外国の進歩的諸勢力と相互提携し、民主朝鮮建設に献身し、世界の民主化に寄与する事を期する」などと掲げた。

〈参考〉金徳龍『朝鮮学校の戦後史—1945—1972〈増補改訂版〉』(社会評論社、2004 年)

 この後朝連は、1948年の南朝鮮における単独選挙に反対し、北朝鮮人民会議が提議した8月選挙を支持し、これを中央政府の樹立として歓迎した。共和国政府の樹立を解放後三年間の独立のための朝鮮人の熱望、努力の結実と捉え、これを支持・歓迎したのである。
 しかし、共和国政府樹立直後から在日朝鮮人は共和国の国旗を掲揚することさえ超法規的に禁じられ、共和国国民としての取り扱いを受けることができず、共和国との往来も禁じられた。朝連は共和国政府樹立の一年後、強制解散させられることとなった。総連は、このように共和国支持が抑圧され、在日朝鮮人の組織・団結権さえ否定されるなか、朝鮮戦争を経て結成された民族団体であった。
 このように共和国政府の支持や共和国国民としての地位要求は、解放から現在に至るまで一貫して認められることはなかったのである。在日朝鮮人の運動によって共和国との往来が一定程度、認められるようになったのさえ1970年代に入ってからである。そうした権利さえ、現在は日本の共和国に対する独自制裁、「再入国許可」規制によって常に制限されている。
 在日朝鮮人の諸権利について考察する際、以上のように在日朝鮮人が解放後日本において一度として、共和国国民としての地位や権利が認められていないという事実こそ想起する必要がある。旧宗主国・日本からの独立、分断後にいかなる社会、政府を在日朝鮮人が支持し、紐帯を持とうとするかについて日本は干渉すべきではない。それは全的に在日朝鮮人の自決権に属する問題である。朝鮮人の独立を抑圧し続けてきた旧宗主国・日本の政府、社会が在日朝鮮人の意志決定を否定し、左右しうるという認識こそ、「植民地主義」と呼ばれるものである。
 在日朝鮮人の民族教育についても同様である。共和国を本国とした教育を望む在日朝鮮人にとって、共和国との紐帯を問題にした民族教育弾圧は、共和国を本国とした教育を受ける権利、すなわち公教育の権利に対する侵害にほかならない。たしかに民族教育弾圧の問題は、日本国憲法に規定された人格権(13条)、平等権(14条)、学習権(26条)などの人権規定からも問われるべき問題であろう。一方で、朝鮮民主主義人民共和国憲法は、第15条にて「朝鮮民主主義人民共和国は、海外に居住する朝鮮同胞の民主主義的民族権利及び国際法で公認された合法的権利及び利益を擁護する」とし、第62条2項にて「公民は、居住地に関係なく朝鮮民主主義人民共和国の保護を受ける」と規定している。共和国制裁を背景とした強制捜査、補助金打ち切り、「高校無償化」排除などは、こうした共和国憲法に規定された共和国国民としての諸権利に対する侵害という観点からも捉えられなければならないのである。
 日本社会において朝鮮学校の民族教育を在日朝鮮人の民族的アイデンティティ形成の場として支援、擁護する声がないわけではない。しかし、そこで擁護される「民族教育」とは共和国を支持、肯定することとは区別して論じられる傾向にあり、朝鮮学校・在日朝鮮人が共和国を支持することそれ自体を権利として訴える声は日本社会のなかで多くはない。在日朝鮮人の民族教育の権利が、子どもの学習権、教育権の問題として強調されることはあっても、在日朝鮮人の自決権の問題といった視角から論じられることはほとんどないのである。
 民族教育弾圧の問題は、在日朝鮮人の自決権の問題と表裏一体である。共和国を支持し紐帯を持つことを認めるか、在日朝鮮人の自決権を認めるか。それこそが日本社会で問われるべきことである。日本国が百年以上、一度として認めてこなかったことである。
 愛知・「高校無償化」裁判闘争は、在日朝鮮人と総連、「祖国」・共和国との関係性、歴史性を真正面から問うてきた。にもかかわらず、名古屋地裁判決がそうした問いに応えることなく、自らの固定観念に基づいた判断を下したことは残念でならない。
 日本社会、政府、司法は在日朝鮮人の民族教育を保障すべきである。民族教育権を侵害すべきではない。共和国国民を殺してはならない。共和国やその指導者を支持、肯定することを抑圧すべきでない。在日朝鮮人の組織・団結権を尊重すべきである。在日朝鮮人弾圧、共和国に対する独自制裁を止め、在日朝鮮人の自決権を認めるべきである。(誠)

kyouiku


(了)

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日本の歪んだ”北朝鮮”報道を問う-新たな平和統一時代のなかで

歴史的な4.27北南首脳会談を迎え、朝鮮半島の平和と統一へと向かう気運がこれまでになく高まっている。北南両首脳は分断70年を象徴する軍事境界線を手を取り合って行き来し、朝鮮半島の平和と統一に向かって進むことを固く宣言した。

*参考記事
[朝鮮新報]“志と力、知恵を合わせ前進しよう”/北南首脳の共同会見
http://chosonsinbo.com/jp/2018/04/yr20180430-3/

 歴史的転換点となった4月27日は我々在日同胞も各地で集い、新たな時代の幕開けに大いに湧いた。
 一方で、歪んだ“北朝鮮”像をばら撒く日本政府やメディアの在り方は相変わらず健在だ。北南首脳会談翌日も、大手新聞各社の見出しには反”北朝鮮”を滲ませるものが目立った。笑顔で対話する両首脳や板門店宣言の内容を懐疑的に捉え、日本は”北”への圧力を緩めるべきでないと強調した。今年2月の平昌五輪開催時、「平和ムードの演出」「北の思惑」といった言葉をしきりに並べ、北南の交流と融和に水を差し続けた風潮となんら変わっていない。このような日本による対”北朝鮮”報道の問題点について述べたい。

 一つは、昨今の「朝鮮半島の非核化」実現をめぐる報道である。非核化に向けた各国の具体的な動きに注目が集まるなか、「北朝鮮が本当に核を手放すかどうか」に焦点を当てた言論が目立つ。各報道機関は朝米基本合意(1994年)と六者協議声明(2005年)の破綻などを挙げ、「北朝鮮は何度も裏切ってきた」という論調で朝鮮への不信感を国民に抱かせる発言・報道を繰り返している。

*参考記事
[日本経済新聞] 3月6日付 「北朝鮮の非核化 裏切りの歴史」
https://goo.gl/CGwpJY

[東京新聞] 4月28日付「社説 南北首脳会談 非核化宣言を行動へ」
https://goo.gl/7r93Rv

(文中引用)
 …首脳会談後に発表された「板門店宣言」を見ると、不十分な点もある。会談の最大の焦点だった「非核化」については、「完全な非核化を通じ、核のない朝鮮半島を実現するという共通の目標を確認した」という表現になった。…北朝鮮は自国だけの非核化を、拒否しているとも受け取れる。

 しかし、当然ながら「朝鮮半島の非核化」問題は朝鮮の核放棄だけを指すのではない。金正恩国務委員長は5月7日、習近平主席との会談で、関連各国が対朝鮮敵視政策と安全への脅威を止めれば、朝鮮が核を保有する必要はなく非核化も可能だと改めて述べた。朝鮮が核を廃棄するには、米国が朝鮮への敵視政策を中止し侵攻しないことが保証されなければならない。したがって政府やメディアは「朝鮮半島の非核化」問題を取り上げるならば、「”北朝鮮”が約束通り核を捨てるか」という観点からのみ追及するのではなく、米国が朝鮮半島を侵略せず平和を担保するためどのように働きかけるか(=平和協定締結や朝米国交正常化に尽力するかどうか)についてもっと着目しなければならないはずだ。しかし、そのような視点が欠けているばかりか、そもそも朝鮮が核開発を進めざるを得なかった背景について言及するメディアすらほとんど無い。「朝鮮半島の非核化」問題を考えるにあたり、朝鮮戦争期からはじまった朝米間の核をめぐる経緯がどのようなものであったか今一度正確に紐解いていく必要があるだろう。

*参考記事
[朝鮮新報] 合意を反故にしてきたのは米国/朝米合意、破たんした経緯
http://chosonsinbo.com/jp/2018/04/17suk-9/

 もう一つの問題点は、昨今の”北朝鮮”報道には、過去に朝鮮を植民地支配し民族分断の苦しみを強いた当事者としての日本の責任・視点が全く抜け落ちているという点だ。4.27首脳会談翌日の産経新聞から象徴的な文を引用する。

「満面の笑みで向き合う両氏の姿には違和感を覚えた。同じ朝鮮民族として、「分断」を終わらせたいとの思いはあるのだろう。」(『産経新聞』2018.4.28 朝刊)

 この文章からは、民族分断を招いた日本としての立場-当事者性は到底感じられない。
言うまでもなく、日本はかつて朝鮮を植民地支配した。1945年の「解放」後、日本軍の武装解除のため進駐した米ソによって朝鮮は分割占領された。周知の通り、米軍は朝鮮独立国家樹立の萌芽としての朝鮮人民共和国や実質的な自治機構であった人民委員会を南側地域では一切認めず、朝鮮総督府の機能・官僚制を維持、植民地支配残滓勢力と結託して占領していく。朝鮮分断の遠因は日本による植民地政策にあり、日本は決して無関係などではない。このような日本の歴史的責任-立場性が抜け落ちた報道がしばしばされるのは、過去の植民地政策など、朝鮮半島を取り巻く歴史認識が歪められているためであろう。本来なら、日本は朝鮮への植民地支配の過去を精算し、また朝鮮分断の歴史的責任を背負う国として、北南が分断を乗り越え平和へ向かおうとしている情勢を積極的に後押しすべきだ。

 また、偏った”北朝鮮”報道が、日本で生きる朝鮮人への差別や偏見に容易に繋がっていくということも、政府や報道機関は深く考慮するべきである。去る2月23日に起きた朝鮮総聯中央本部への銃撃事件の犯人は、「北朝鮮のミサイル発射が許せなかった」と供述しており、マスコミによる連日の”北朝鮮”報道に触発されたことが見て取れる。在日朝鮮人への迫害を当然視する社会の醸成を、メディアが後押しするようなことは断じてあってはならない。
 ちなみに、インターネット上では昨今の差別的”北朝鮮”報道を反対するキャンペーンが実施されているので、紹介しておきたい。
 [朝鮮民主主義人民共和国に関する公正で客観的な報道を求めます]
 https://goo.gl/bnWTRp

 昨年から、安倍政権は朝鮮半島危機を過剰に煽り、「国難」を叫ぶことで政権浮揚を図ってきた。その過程でメディアは政権にとって都合の良い”北朝鮮”宣伝に従事してきたと言わざるを得ない。ステレオタイプの”北朝鮮”像を掲げ、自国の植民地支配責任は棚に上げて「圧力」「制裁」「拉致」を叫び続ける日本政府は、日々激動する朝鮮半島情勢を巡る外交レースから完全に置きざりの印象を受ける。

*参考記事
[朝鮮新報]「拉致」持ちだす日本、「愚かな醜態」/朝鮮中央通信論評
http://chosonsinbo.com/jp/2018/05/yr20180514-4/

 (文中引用)
 論評は日本が朝鮮半島の情勢発展に逆行し、「拉致問題」を世論化する背景には、朝鮮半島をめぐる国際政治に参加できずにいる哀れな境遇から脱し、他国の「同情」を呼び起こし、過去精算を回避しようとする意図があると指摘。「一寸先も見通せない愚鈍な政治視野によって自ら疎外を招いているのが安倍政権である」とし、「過去清算だけが日本の未来を保障する」と断言した。
 
 政権腐敗ぶりが露呈している今、改めてメディアの担う役割、在り方が問われているのではなかろうか。

 4月27日、両首脳が軍事境界線を越えたとき、分断の象徴であった板門店は平和の象徴として皆の目に映った。民族の尊厳回復と平和統一を求める我々の心を踏みにじり、また在日朝鮮人を脅威にさらす”北朝鮮”報道は、決して見過ごすことはできない。このような状況のなか沈黙せず声を上げていくことは、日本で生きる朝鮮人としての重要な役目だ。(和)

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在日朝鮮人の民族教育と自決権〜朝鮮学校「高校無償化」裁判と総連・共和国〜(上)

さる4月27日、愛知朝鮮中高級学校の生徒、卒業生たちが提起した「朝鮮高校生就学支援金不支給違憲損害賠償請求訴訟」(2013年1月24日提訴)について名古屋地方裁判所は、原告の請求を全て棄却する判決を下した。広島(2017年7月19日)、大阪(同年7月28日)、東京(同年9月13日)に次ぐ4番目の地裁判決だった。北南首脳会談が開催され、「板門店宣言」が発表されたその日、名古屋地裁前や報告集会会場では、在日朝鮮人たちの怒号が溢れた。

[朝鮮新報]〈愛知無償化裁判〉行政の差別を追認/“ありえない恥ずべき判決”
http://chosonsinbo.com/jp/2018/04/rp201804301/

 この愛知の地裁判決の特徴は、同様に原告側敗訴となった広島、東京地裁判決とも異なり、国側が主張する「不当な支配」(教育基本法第16条1項)の内実として、朝鮮学校の教育内容について具体的に言及し、総連・共和国による「不当な支配」の可能性(「合理的疑念」)を認定している点にある。国側の主張を追認するのみならず、司法が朝鮮学校の民族教育の内容にまで評価・価値判断を下し、総連・共和国に対する偏見を露わにしている点で悪質なものだったといえる。
 こうした「高校無償化」裁判をめぐる議論において常に焦点となるのは、朝鮮学校の民族教育と総連・共和国とのかかわりについてである。以下では、(一)愛知「高校無償化」裁判地裁判決の特徴について整理、検討し、(二)在日朝鮮人、朝鮮学校と総連、共和国とのかかわりについて在日朝鮮人の自決権といった観点から考察してみたい。

1.愛知「高校無償化」裁判地裁判決の特徴

 まず名古屋地裁判決の特徴について、判決要旨を中心に検討してみたい。
 第一に、この判決は指定規程13条に適合すると認めるに至らなかったことを理由に挙げた不指定処分に対する追認ありきのものである。愛知の地裁判決は、広島、東京地裁判決とは異なり、不指定処分が政治外交上の理由に基づくものであるという原告側の主張に対して、「〔不指定処分の背景には〕朝鮮高校を支給対象校とすることが拉致問題との関係で相当ではないという考えもあったと認めるのが相当である」とし、「拉致問題は、愛知朝鮮高校を支給対象校とすべきか否かの指定要件と無関係の事項であるから、これが不指定の理由とならないことは原告らの主張のとおりである」と認めている。
 しかし、「本件申請が指定要件に適合しなかった以上、文部科学大臣としてはいずれにせよ不指定処分をせざるを得ない」のであり、「拉致問題との関係でも指定は相当ではないとの考えを有していたとしても、それにより不指定処分が違法になるとはいえない」と判示した。下村博文文科大臣(当時)による2012年12月28日記者会見などからも確かめられるように、「拉致問題」などの政治外交上の理由に基づく朝鮮学校排除が結論としてあり、不指定処分の理由付けのために指定規程13条適合性を文科省が持ち出したことは明らかだ。判決はこうした明白な経緯、事実関係を等閑視し、規程13条に適合すると認めるに至らなかったから不指定処分にせざるをえなかったとする国側の主張を追認しているのである。
 こうした判決の立場は、不指定通知の理由提示をめぐって、行政手続法8条(行政処分の理由提示義務)違反と国家賠償請求に関する判断においても同様に確かめられる。2013年2月20日付で朝鮮高級学校10校に通知された不指定通知では、不指定処分の理由として、(一)規定ハを削除したこと、(二)指定規程13条に適合すると認めるに至らなかったこと(加えて愛知は、教員数に関する形式上の問題)が挙げられているのみでなんら具体的な理由は提示されていなかった。
 このことについて判決は、「単に要件適合性が認められない条項が本件規程13条であることを指摘するのみでは、いかなる事実関係に基づき、いかなる法令違反の疑いを認定して本件不指定処分がされたのかを、通知書自体から了知することはできないから、行政手続法8条1項の求める理由提示としては不十分である」と指摘した。広島判決が「処分要件の適合性については、申請者側において明らかにすべきもの」であり、「〔不指定処分の理由は〕原告法人において了知できた」とだけ言及したこととは異なり、名古屋地裁は不指定通知が「理由提示として十分でないといわざるを得ない」と指摘したのである。
 しかし、(一)理由提示の違法性は原告ではなく愛知朝鮮学園との関係における手続き上の瑕疵であること、(二)愛知朝鮮学園及び原告は審査会の審査経過や文部科学省からの確認内容を通じ、不指定処分の理由を事実上認識し得たことを挙げ、「不指定処分の理由提示が不十分であったことにより、原告らの法的保護に値する権利侵害が侵害されたとまでは認められず、国家賠償請求は認められない」と判示した。不指定処分における理由提示の不十分さを認めつつ、国家賠償請求の理由としては認められないと判断したのである。
 第二に、施行規則1条1項2号ハ規定削除の違法性に対する判断回避である。国側は不指定処分の理由の一つにハ規定削除そのものを理由に挙げていた。また国側のいう指定規程13条適合性について、2013年度以降に仮に確証が得られるようになったとしても根拠省令の削除によって朝鮮学校は指定を受けることができないのだから、当然ハ規定削除自体の違法性についても判決において検討されなければならなかったはずである。
 しかし判決は、「本件省令ハの削除が仮に違法であったとしても、本件不指定処分の実体的違法性を基礎付けることにはなら」ないとして、ハ規定削除の違法性に関する判断をする必要がないことを示唆した。愛知の地裁判決は広島、東京判決よりもさらに踏み込んで、「〔原告たちの在学中に〕愛知朝鮮高校と朝鮮総聯の関係が劇的に変化し、愛知朝鮮高校が朝鮮総聯から「不当な支配」を受けているとの合理的疑いを文部科学大臣が抱かない可能性が相当程度あったと認めることは困難である」とまで言及した。そして、「本件省令ハの削除の違法性について判断するまでもなく、本件省令ハの削除により、原告らの就学支援金に関する法的利益が侵害されたとは認められない」と判示した。ハ規定削除の違法性を糊塗するために、将来的にも13条に適合すると認めるに至る可能性はなかったとすることで、その違法性判断を回避したものといえる。
 そして最後に、最も深刻な点として、朝鮮学校の教育内容と「不当な支配」に関する判決の価値判断についてである。愛知の地裁判決は、広島、東京判決が正当化した「授業料に係わる債権に充当されないこと」への「懸念」とは別に、朝鮮学校の教育内容について具体的に言及し、「不当な支配」の「合理的疑念」を認定した。
 判決はまず、教育基本法第16条1項が禁じている「不当な支配」について、「「不当な支配」の主体には朝鮮総聯や北朝鮮も含まれ得る」として、「一部の社会的勢力が教育に不当に介入することにより、党派的な政治的観念や利害によって支配されるべきものではない教育が、その本来の目的に従って行われることをゆがめられるような支配をいうと解するのが相当である」と指摘した。
 その上で、①総連などの介入によって「理事会・評議員会による学園運営が自律的に行われていないのはないかという合理的疑念が存在する」こと、②朝鮮学校の教育内容について、「北朝鮮の政治指導者を個人崇拝し、その考えや言葉を絶対視するような内容のものとなっていると合理的に疑わせる事情が存在した」ことを挙げ、指定規程13条に適合すると認めるに至らないことを理由とした文科大臣の不指定処分に裁量権を逸脱・乱用した違法があるとは認められないと判断した。
 この判決の特徴として特筆すべきは、②の朝鮮学校の教育内容について具体的に言及し、朝鮮学校が共和国やその指導者を支持・肯定することを「不当な支配」が疑われる事情として認定した点にある。判決は、「在日外国人団体が外国本国ないし在日民族団体から教育内容について影響を受けること自体は一般的にもあり得ること」としつつ、朝鮮学校の教科書について、「その中には北朝鮮の最高指導者を絶対視し、これを賛美・礼賛する表現が多数見られ」、「一方的に偏った観念を植え付ける教育なのではないかとの疑いを抱かせるものであったこと」を指摘した。
 さらに判決は、「北朝鮮の政策を高く奉じ、朝鮮総聯の綱領を固守することを任務」としている朝青との関係や、総連の指導を問題に挙げた。その上で、教育基本法16条が「教育の中立性・不偏不党性」を求めているとし、「「不当な支配」の有無を判断するに当たって、教育内容が一切判断材料にならないとは考えられない」と指摘した。そして、「北朝鮮の最高指導者を絶対的なものとして崇拝する教育が行われているとの合理的疑念がある」として、「不当な支配」の「合理的疑念」を認定したのである。こうした判断は、朝鮮学校が共和国(とその指導者)を支持し、その立場から教育を行うことそれ自体を、「不当な支配」が疑われる事情として断定したという点で、裁判官の偏見が表出したものだといえる。裁判官は、日本の教育は「中立性・不偏不党性」があり、共和国の指導者を肯定的に評価し、教育することは「不当な支配」に繋がりうるという自らの価値観を判決文において披瀝したのである。
 こうした判決のさらなる問題点は、朝鮮学校の民族教育と共和国(とその指導者)を支持することとを区別し、後者を「不当な支配」と関連づけ、論じていることである。判決は、「生徒や父兄の多くは在日朝鮮人同胞と民族教育が受けられる点を重視して朝鮮高校を進学先に選択していることが認められる」としつつ、「民族教育の価値を尊重すべきことと、「不当な支配」が疑われることは別個の問題として考えざるを得ない」と指摘した。そして、「〔文科大臣の認定判断の裁量が〕比較的狭いことを考慮しても、裁量権を逸脱・乱用した違法があるとは認められない」と判示した。「民族教育」とは、共和国の指導者、「北朝鮮の政策」を支持することとは分離されるべきだという裁判官の価値判断が反映されているのである。
 こうした判断は、不指定処分の取り消し・指定の義務づけを認めた大阪地裁の判決とは極めて対照的である。大阪地裁判決は、「朝鮮高級学校が朝鮮語による授業を行い、北朝鮮の視座から歴史的・社会的・地理的事象を教えるとともに北朝鮮を建国し現在まで統治してきた北朝鮮の指導者や北朝鮮の国歌理念を肯定的に評価することも、朝鮮高級学校の上記教育目的それ自体には沿うもの」として、大阪学園側の主張を受け入れた。また、朝鮮学校と総連との関係性について次のように指摘した。

朝鮮総聯は、第二次世界大戦後の我が国における在日朝鮮人の自主的民族教育が様々な困難に遭遇する中、在日朝鮮人の民族教育の実施を目的の1つとして結成され、朝鮮学校の建設や学校認可手続などを進めてきたのであり、朝鮮学校は、朝鮮総聯の協力の下、自主的民族教育施設として発展してきたということができる〔中略〕、このような歴史的事情等に照らせば、朝鮮総聯が朝鮮学校の教育活動又は学校運営に何らかの関わりを有するとしても、両者の関係が我が国における在日朝鮮人の民族教育の維持発展を目的とした協力関係である可能性は否定できず、両者の関係が適正を欠くものと直ちに推認することはできない。〔中略〕朝鮮高級学校において北朝鮮の指導者に敬愛の念を抱き北朝鮮の国家理念を賛美する内容の教育が行われており、この教育に朝鮮総聯が一定程度関与している事実をもって本件特段の事情〔債権の確実な充当にあてられないという懸念、「不当な支配」を受けているとの疑念を生じさせる事情〕があるということはできない。

 以上のような大阪地裁判決からも愛知の地裁判決の問題点は明らかである。愛知の地裁判決は、共和国(とその指導者)を支持することそれ自体が、「一方的に偏った観念を植えつける」ものだという判断に基づいているのである(大阪判決は、「北朝鮮の指導者に敬愛の念を抱き北朝鮮の国家理念を賛美する内容の教育」それ自体をもって、「不当な支配」の「合理的疑念」を認定できないと判断している)。上述した愛知の判決こそが、「偏った観念」、偏見に満ちたものだといえる。
 名古屋地裁判決は民族教育の意義、朝鮮学校の営みを真っ向から踏みつけ、ねじ曲げたものである。判決は、「在日朝鮮人である原告らにとって、同胞が共に学ぶ朝鮮高校において民族教育を受け、自己の民族的アイデンティティを確立することが、その人格形成に当たって極めて重要なものであることは十分首肯し得る」と指摘した。さらに、「本件不指定処分が学校選択の自由に間接的に影響を与える側面を有することも否定できない」とし、「朝鮮語を公式言語とする学校が朝鮮高校以外に存在しないとすれば、朝鮮高校が不指定処分を受けた場合に、これに代替する学校が見つけることが困難であることも理解できる」とした上で、次のように主張した。

しかしながら、本件不指定処分の法的効果は、愛知朝鮮高校で学ぶ生徒に年額11万8800円の就学支援金の受給資格が認められないというものにとどまり、愛知朝鮮高校において民族教育を行う自由を法的に規制する効果を伴うものでも、原告らが愛知朝鮮高校にて学ぶ自由を法的に規制する効果を伴うものでもない。〔中略〕また、本件省令ハの削除が、朝鮮高校生に対する差別意識に基づいて行われたものであるとか、朝鮮高校生に対する差別感情を助長させる効果を有するものである場合には、就学支援金に関する法的利益とは別に、原告らの人格権を独立して侵害する可能性があるが、〔中略〕本件省令ハの削除が、このような目的・効果を有するものであると認めることはできない。

 判決は、無償化制度から適用が除外されたとしても、年11万8800円の就学支援金が受給できないものに留まり、民族教育が法的に規制されるわけでもないと言い切った。そして、ハ規定削除は朝鮮学校生徒に対する差別感情を助長させる効果さえも存在しないと断じたのである。朝鮮学校・在日朝鮮人に対する差別、抑圧政策に加担し、助長する醜悪な判決だと言わざるをえない。
(誠) (下に続く)

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