留学同情勢ニュース

留学同が朝鮮半島情勢や在日同胞に関する記事を配信するブログです。

日本の教科書をめぐって

朝鮮学校や民族学級、その他様々な場で民族教育を受ける機会を持ちえていない在日朝鮮人は、日本学校に通いそこで教育を受ける。
その数について統計的な数値を示すべきだろうが、少なくない在日朝鮮人の子ども達が日本学校で教育を受けている。そういう意味で私たちも無関心ではいられない。

今年は4年に一度の中学校教科書の採択の年である。
教科書採択の前には、教科書「検定」というものが行われるが、実はこれが去年行われ、2015年4月6日、検定結果が公開された。
前回検定時の2011年時には、安倍内閣が成立していなかった。ここに今回の違いがある。
今回の検定では、戦争美化などを主張す育鵬社版歴史・公民教科書、並びに自由社版歴史教科書が検定に合格した。

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この流れを巡って、3つ見てみたい。
1つ目は検定までの過程における問題
2つ目は育鵬社、自由社教科書の内容の問題
3つ目は、それらの教科書採択をめぐる動き


まず、一つ目についてだが、そもそも去年2014年に検定基準と、検定審査要綱が改悪された。
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/kyoukasho/gaiyou/04060901/1338839.htm

検定基準においては近現代の出来事について、「政府の統一的な見解」がある場合には、「それに基づいた記述」が求められるようになった。

その政府の統一的な見解とは以下の通り。

戦後補償問題で「国家間での賠償問題は解決済み」という政府の立場を追加させた。
また、日本軍「慰安婦」の記述で「軍や官憲によるいわゆる強制連行」を直接示すような資料は発見されていない」という政府の立場を追加させた。

また、通説的な見解がない事柄を記述する場合や、特定の見解を強調して記述している場合などに、よりバランスの取れた記述にすることにし、関東大震災で軍や警察・自警団によって数千人の朝鮮人が虐殺されたという記述に対して「数千人」は通説的な数字ではないことを追加させた。


検定審査要綱については、教育基本法の第2条(愛国心教育)や学習指導要領に照らして重大な欠陥があると判断された場合は、検定意見の多寡に関わらず不合格とした。


これに加え、学習指導要領「解説」を改悪した。
http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2014/10/01/1234912_003.pdf

端的に言うと、歴史・公民・地理すべての教科書に「領土問題」が掲載され、日本政府の見解しか、書かれていないということだ。



2つめについてだが、これまで以上に、近代日本が行った侵略戦争と植民地支配を美化し、加害をなかったことにし戦争に対する否定的心情を払拭して「戦争する国作り」へ子どもたちを誘導しようとしている。
以下、歴史の教科書についてみる。

まず、日露戦争について、ロシアのアジア進出を「わが国の存立の危機」(育鵬)、ロシアの軍事力が「日本が太刀打ちできないほど増強されるのは明らかだ」(自由)と事実にも反して危機を強調し、自衛のための戦争と正当化している。他社でとりあげている当時の反戦論や重税反対の動きには触れず、コラムなどで、日本人全体が戦争に協力したかのように教えている。

「韓国併合」(朝鮮強占)後、朝鮮で土地を追われた農民が多数出たことは、2006年版までは両者とも本文に書いていたが、育鵬社は全て削り、その上、「併合」後、朝鮮の人口・耕地面積・米生産量・学校数などが増えたことを示す表だけを入れ、何故そうなったのかを説明無しに入れている。また、自由社も、鉄道・灌漑施設などの開発や「学校も開設し、日本語教育とともに、ハングル文字を導入した教育を行った」など善政を強調している。「韓国併合」により朝鮮に与えた被害など反省すべき点を書いている他社教科書とは違う。

アジア太平洋戦争についても、当時の日本政府の主張そのままに、アジア諸国を欧米の植民地から解放するための戦争だったと教えることに力を注いでいる。戦争初期の「日本軍の勝利に、東南アジアやインドの人々は独立への希望を強くいたきました」と書き、インド国民軍、ビルマ独立義勇軍、インドネシア義勇軍などが日本軍の協力して戦ったことを強調する(育鵬社)。また、「アジアの人々を奮い立たせた日本の行動」「日本を解放軍としてむかえたインドネシアの人々」というコラムをのせている(自由社)。これらは日本の行った戦争の本質を誤解されるものであり、アジア解放の戦争という意味「大東亜戦争」をタイトルに使っている。

公民については、詳しくは触れないが、育鵬社教科書には安倍首相の写真が15枚も出る。これは14ページに1枚という計算でとても教科書とは思えない。また、「戦争」できる国、軍国化していく国へと総じてリードしている。



と、書いてきたが…本当に来るところまで来たと感じる。


3つ目について、
2011年11月時点では育鵬社・自由社教科書の採択・占有率は、歴史48642冊 (3.8%)、公民49223冊 (4.1%)であった。
「日本教育再生機構」、「教科書改善の会」は採択運動により、占有率10%、120000冊以上の採択を目指すという。

5月13日に、六本木で行われた集会「育鵬社最新版歴史・公民教科書出版記念&採択に向けた集い、あなたのまちにも育鵬社の教科書を!~『日本がもっと好きになる』教科書を全国の子供たちに届けよう」に、安倍首相の腹心中の腹心、衛藤晟一首相補佐官が参加した。かれの発言の要約を見よう。

「安倍政権は、日本の前途と歴史教育を考える議員の会(教科書議連)の議員が中心になって誕生させた。第三次政権の中核は「教科書議連」のメンバーが占めている。安部首相と共に「教科書議連」は「慰安婦」問題を追及し、06年に教育基本法を改正した。そしてもう一つが教科書だ。皆さんが頑張って、このすばらしい教科書ができた。後は、このすばらしい育鵬社を採択できるように努力する。具体的は、私共の考えと近い主張を選んで貰いそこで教育行政がきちんと行われるように、その意思を受けた教育長が選任されなければいけない。その選任された教育長と主張がどういう教科書を採択するか決める権限がある。その方向に向かって一緒に頑張る。 安倍政権を誕生させ、育鵬社教科書ができた。やっとここまで来た。だから今は感無量だ。いよいよ本番だ、という認識を持っている、それが教科書の採択にかかっている。」




一応、立場の中立性や内政不干渉云々とか色々考えて、この記事を書いてきたが、そろそろ我慢できそうにない。
日本学校に通う在日朝鮮人生徒達が危ない。クソッたれ!(洪)

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「6.15」を直前にして

 先日、ハンギョレにブルース・カミングスのインタビューが掲載された。内容は、「日本の歴史家を支持する声明」への参加理由と、日本の歴史問題についてである。短い文章なので一読をお薦めする。ちなみに、タイトルは「米国は70年間、韓国より日本を好んだ」である。
(朝鮮語 http://www.hani.co.kr/arti/international/america/690892.html
 日本語 http://japan.hani.co.kr/arti/international/20634.html)

 さて、上記の話題とは関係ないが、「6.15民族共同行事」に関しての続報である。結論的にいうと、7年ぶり実現が期待された共同行事の開催は、事実上不可能になったといえる。
統一ニュースが報じたところによると、「6.15共同宣言実践北側準備員会」が6月1日付の書信で共同行事の分散開催を提案したという。
(http://www.tongilnews.com/news/articleView.html?idxno=112218)

当たり前だが、突然北側の気が変わったというわけではない。確かに5月5日~7日に中国で行われた事前協議は、共同行事の開催地をめぐって難航していた。しかし、難航しながらも、6.15をソウルで、8.15を平壌で開催する方向で話が進められた。更には、6月15日~8月15日を「第2の6.15統一時代を切り拓くための共同運動期間」とし、6.15以降も引き続き統一事業を活性化させていこうとなったのである。しかし、その事前協議の直後、南の統一部は共同行事について、「文化・学術・体育など民間交流は認めるという趣旨で承認を検討する」としながら、「政治性を帯びる行事」を許可しない姿勢を示した。
(朝鮮新報http://chosonsinbo.com/jp/2015/05/2015-05-22_6-15event/
 統一ニュースhttp://www.tongilnews.com/news/articleView.html?idxno=111911参照)

 北側委員会が問題視したのはこの点である。このような南側の立場が変わらない以上、実務協議を行っても何ら実りもなく、「6.15共同行事」はそれぞれ別で開催せざるを得ないということである。これを単なる開催地の問題に限定して考えると、「6.15」もさることながら、解放70年という節目の年である今年、「8.15」共同行事を自らの地で開催したいという双方の思惑がぶつかってもめている、という見方を出来なくはない(実際そういう側面もあるかもしれないが)。
 そもそも、6.15共同宣言実践民族共同委員会の北、南、海外側委員会は、北南関係改善し、祖国統一を実現するという願いを反映し、民族共同行事を全民族的大祝典として政治的意義のあるものにしようと、今年に入って協議を重ねてきた。その過程で、「6.15共同宣言発表15周年、祖国解放70周年記念民族共同行事準備委員会」が発足し、民間交流としての共同行事開催の準備が進められていた。そのような動きの中での、上記の南側政府の対応である。果たして、共同行事の開催を破綻に追いやったのは誰であろうか?
(朝鮮通信http://www.kcna.co.jp/index-k.htm参照)

 最後に、南朝鮮は今年も3月から4月にかけて米国との合同軍事演習を強行し、朴槿恵大統領は北に対する対決姿勢を維持したままだ。このような緊張状態の中で民間交流を行なうことの意味はある。もちろん、根本的な北南関係の改善、祖国統一を実現させるためには、60年以上続く朝鮮戦争の「停戦体制」をいかに終結させるのかという大きな課題が存在する。だからこそ、民間交流などを通して統一の雰囲気を醸成し、下から突き上げる意味はあるのではないだろうか。統一を望む人たちは、今もなお確かに存在しているということを示すことが。(匡)

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