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「朝鮮」表示者に対する「『誓約書』要求問題」と再入国許可制度

 共和国の水爆実験、人工衛星打ち上げを理由に、国連安保理は共和国に対する制裁を強化する決議を行った。
日本政府はというと、右に倣え、どころか独自の「制裁」まで課している。2月10日に発表した「わが国独自の対北朝鮮措置」がそれで、四項目に分けて制裁措置を実施している。

(※参考【首相官邸】我が国独自の対北朝鮮措置について 
http://www.kantei.go.jp/jp/headline/northkorea201602/20160210_northkorea_sochi.html)

  「独自制裁」発表以降、日本各地の入国管理事務所や空港の入管ゲートで、「朝鮮」表示者(特別永住者証明書または在留カード上の「国籍・地域」欄が「朝鮮」となっている者)に対し、「私は北朝鮮には渡航しません。仮に北朝鮮に渡航したことが確認された場合には再度上陸が認められないことを承知した上で出国します」とする内容の「誓約書」に署名を求めるという、とんでもない人権侵害が相次いでいることがわかった。
 この「『誓約書』要求問題」に関しては、朝鮮新報で明らかにされているので、参照されたい。

(※参考[朝鮮新報]入管当局による明白な権限濫用/「朝鮮」表示者への「誓約書」要求
http://chosonsinbo.com/jp/2016/03/31suk/)

 朝鮮新報が指摘するように、「独自制裁」では「北朝鮮を渡航先とした再入国の原則禁止」とする対象として「在日北朝鮮当局職員及び当該職員が行う当局職員としての活動を補佐する立場にある者」を挙げ、その「対象者を従来より拡大」するとしているが、この表現が非常に曖昧で、一体誰までが制裁の対象となっているのかわからない。さらにこのような中、「独自制裁」の「朝鮮を渡航先とする再入国の原則禁止」対象でない「朝鮮」表示者に対して見境なく「誓約書」への署名を求めることは、在日同胞たちの祖国往来、海外渡航の権利を蹂躙し、その不安をよりいっそう増幅させるものだ。
 このような措置は一刻も早く改善されるべきであるし、「誓約書」に署名をしてしまった在日同胞に対しては、「誓約書」を返却するなどの救済措置が求められることは言うまでもない。
 しかし、ここで忘れてはいけないことは、なにも「独自制裁」によって人的往来を規制されていることだけが不当なのではなく、永住資格を持つ在日朝鮮人が、海外渡航の際にいちいち再入国「許可」をもらわないといけないことがそもそも不当だ、ということである。

 日本が1979年に批准した「市民的及び政治的権利に関する国際規約」(自由権規約)では、「何人も、自国に戻る権利を恣意的に奪われない」と定めている。同項の定める「自国」とは、「国籍国」のみならず、永住許可を与えた国つまり永住権者の「定住国」も含まれると解釈される。自由権規約は、在日朝鮮人に、定住国である日本に戻る権利を保障しているのである。
 そして、日本国憲法第98条第2項では、「日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする」と定めている。また、日本も批准している条約法に関する「ウィーン条約」(条約法条約)のもとでは、「全ての条約は、当時国を拘束し」、条約の締結国は、「条約の不履行を正当化する根拠として自国の国内法を援用することができない」。つまり、条約を締結している国家は、条約に違反する国内の法律や制度を、条約に合致させていかなければならないのである。
 この点、自由権規約人権委員会が1998年11月に発表した、日本政府報告書に対する最終見解は、「出入国管理及び難民認定法(入管法)第26条は、再入国許可を得て出国した外国人のみが在留資格を喪失することなく日本に戻ることを許可され、そのような許可の付与は完全に法務大臣の裁量であることを規定している。この法律に基づき、第二世代、第三世代の日本への永住者、日本に生活基盤のある外国人は、出国及び再入国の権利をはく奪される可能性がある。委員会は、この規定は、規約第12条2及び4に適合しないと考える。委員会は、締約国に対し、「自国」という文言は、「自らの国籍国」とは同義ではないということを注意喚起する。委員会は、従って、締約国に対し、日本で出征した韓国・朝鮮出身の人々のような永住者に関して、出国前に再入国の許可を得る必要性をその法律から除去することを強く要請する」と指摘し、入管法26条の規定が自由権規約12条2項、4項に「適合しない」と結論付けるとともに、在日朝鮮人に対する再入国許可制度の在り方を厳しく批判している。

 また、日本が自由権規約を批准する前(1979年)の段階でも、渡航の自由はすべての外国人の基本的な人権だとして政治的判断で恣意的にそれを規制することを違法だとする判断を示した判例が存在する。それは、朝鮮創建20周年祝賀在日朝鮮人代表団の再入国不許可処分についての裁判である。この訴訟は、第1審の東京地方裁判所、控訴審の東京高等裁判所のいずれもが、法務大臣の不許可処分が違法であるとして、再入国不許可処分を取り消す旨の判決を下している(東京地方裁判所1968年10月11日判決、東京高等裁判所1968年12月18日判決)。
 それらの判決文には、次のような判決理由が示されている。

 「…渡航の自由は、日本人のみならず日本国に在留する全ての外国人にとっても基本的な人権である」(地裁)、「元来政府の政策は、国益や公共の福祉を目標として企画実施されるべきことは多言を要しないが、政策と公共の福祉とは同義ではないから、或人々が本来享有する海外旅行の自由を行使することが、たとえ政府の当面の政策に沿わないものであつても、政策に沿わないということのみで右自由権の行使が公共の福祉に反するとの結論は導かれないのである」(高裁)

 以上見てきたように、家族や財産などの生活基盤が全て日本国内に存在する在日朝鮮人が、情勢云々や「独自制裁」云々により渡航の自由を奪われるようなことはあってはならないのである。「誓約書」の問題はもちろん、再入国許可制度自体の不当性にも抗っていき、一刻も早い地位改善を実現しなければならない。

 それにしても日本政府は、共和国による自衛的措置としての水爆実験や、宇宙開発のための人口衛生打ち上げに対して「国際的批判は免れない」などと言っているが、数々の国際的批判を無視し、自国の法律さえないがしろにしている日本がよく言えたものだと、改めて思う。(滉)

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入管当局が署名を求めている「誓約書」(人権協会提供)
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